第2787話 73枚目:終わった後

 幸いというべきか、それとも流石に運営も難易度が高いと思ったのか。脱出する際に空間が壊れていく以上の事は起こらなかった。いやまぁ空間が壊れていく中を脱出するって言うのでも既に十分なんだが。

 脱出先は最後の大陸東端だったので注目を集めたのはまぁ仕方ないとして、通常空間では日付が変わるまで30分を切っている訳だ。そしてシステムメールには「期間内討伐」を条件とした文章が書いてあった。

 まぁ特殊スキルの完全解除はいいんだ。どうせなんか空間的な、それこそ異世界とのゲートとかそんなんだろうし。問題は。


「……これって、あれですよね? 散々拾って集めたあの灰色の鍵」

「たまに輪の付いた奴が見つかるらしい」


 特殊アイテムの方だ。「遍く染める異界の僭王」のいたエリアが、時間限定で大神の領域になったのは、そこにくっついてきていたボックスガチャも含めてちょっと遠い目になる記憶だが。

 どうやらやはり多少は出現していた高難度ダンジョン、及びやっぱり底なしらしい最初の大陸のダンジョン、「吞み餓える異界の禍王」を倒したからといって消えないらしい普通の野良ダンジョンから見つかっているらしい。

 一応私も自分で持っていた方の鍵を確認するが、そちらもその「特殊アイテム」という扱いになっているものと同じものに変わったようだ。


[アイテム:異界への鍵

説明:異界へ繋がる扉を開く為の鍵

詳細:特定の場所で使用する事で異世界への扉が開く]


[アイテム:異界への鍵輪

説明:異界へつながる扉を開く鍵を束ねる輪

詳細:異界への鍵を保存しておくことが出来る]


 既に詳細付きの【鑑定】結果は共有されていたが、情報が無いに等しい。まぁ異世界っていうのは、分霊がこっちに来ていた異界の大神の世界なんだろうが、特定の場所ってどこだって話だ。

 現在検証班とベテラン勢が世界中を巡ってこの「異界への鍵」が使える場所を探しているようだが、まだ見つかっていないらしい。一部はこの最後の大陸の、東側の海に潜ったりもしているようだが、それでもだ。

 もちろん「家」も建てられてそこで使われてもいるようだが、どうやら「家」は正式に信仰対象として認められた異界の大神の神殿という扱いになるらしく、世界全体で建てられる数が制限されたらしい。


「……まぁ、大神の神殿ですからね。向こうの世界だと割と建てられているものとはいえ、こっちの扱いに準じて欲しいですし」

「そんなに建ってたのか?」

「大神殿と良い勝負だと思いますよ」

「……そこまで近い大神っていうのも想像がつかないな」

「うちに来てた分霊の事を考えると納得できるんですよねこれが」

「…………」


 なお「異界への鍵」を使う場所は大神殿でも無かったそうだ。まぁ真っ先に試してるだろうしな。一番最初に使えるようになったワープだから。召喚者プレイヤーか“中立にして中庸”の神の神官か、召喚者プレイヤー大神の加護を分け与えられたテイムされた住民でないと使えないけど。

 ま、そうやってすぐ思いつくところが全部ダメだったから、どこなら使えるんだと召喚者プレイヤーが探し回ってるんだろうけど。流石にこっちの神の神域ではないから、そういう意味で迷惑をかける事は無いと思いたい。

 しかし半時間無いからなぁ。鍵を持っていない召喚者プレイヤーは慌ててダンジョンに潜っているようだが……たぶん、この「異界への鍵」は消耗品だし、恒常的に追加されるものの気がする。それこそ例の塗料とかと一緒で。


「とりあえず、帰りましょうか」

「そうするか」


 まー私は奇跡の反動が抜けないと身動き1つ取れないんだけどな。それに時間的にもギリギリな以上、寝とかないと明日が辛い。

 うちの子も皆無事に戻ってこれたし、留守番しているルイルにお土産話をして……。

 ……そういやルージュの鍛冶場にナージュの分霊入り歯車を届けたの、こっちにいるうちの子は誰も知らないな。やっべ、何で言わなかったって問い詰められる気配がする。

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