第2785話 73枚目:レイドボス撃破
ボロボロと自壊していくのを待つことなく、これ以上余計な事をされてたまるかとばかり、レイドボスとして十分ある大きさを丸ごと的として、「吞み餓える異界の禍王」(魔族の王姿)には苛烈な攻撃が間断なく叩きこまれていた。
既に体力バーは3本とも真っ黒になっているし、あれはやはり道連れ能力だったのだろう。それにしてはしぶといし派手だし長かった気がするが。一応、分類は体力(HP)がゼロになる事によって発動する攻撃、だったらしい。
私が願った奇跡は自力解除できず、条件達成で無ければ終わらない。これも縛りの1つだな。だからまだ維持を続けている訳だが……もう出番は無さそうだな。
「そう言えば、この人数分だけ、異界の大神の分霊が救出されて、統合されたんですよね?」
「そうらしいな。というか、あの場から用意されたゲートで脱出したのは数える程しかいなかったらしいぞ」
「大神の加護が通じないかもしれないっていうのに、よく踏み止まったよね。脱出しなかったボクらが言えた事じゃないけどさ」
なお流石にもう食べ物はほとんど残っていないが、お掃除魔法と回復魔法で力を取り戻すらしい異界の大神の分霊。脱出用ゲートを安定して出してくれるかも知れないって事で、お風呂で丁寧に洗われながら回復魔法をかけられまくっているらしい。
そうだな。脱出の為のゲートを使わなかったんだから、どうやって脱出するんだって話だからな。もちろん「第一候補」がいる別動隊の方もゲートが出て、それを使わず留まって、通常空間に戻る為の道を何とかしようとしているらしいけど。
いずれにせよ、こんな世界の端か、世界から半歩飛び出たような場所から世界の中に戻るには、神の力が必須だ。そしてその格は高い方がいいし、その力には余裕があった方がいい。当然の話だな。
[件名:イベントメール
本文:レイドボス「吞み餓える異界の禍王」が討伐されました
イベント期間内にレイドボスが討伐された為、特殊スキルが完全解除されます
イベント期間内にレイドボスが討伐された為、特殊アイテムが出現します
レイドボスが討伐された為、世界に新しい信仰対象が出現します]
そして、誰の攻撃がトドメとなったのか。もう分からないぐらいの袋叩き状態だったが、システムメールが届いたという事は、今度こそちゃんと倒せたのだろう。
最後の一欠片まで徹底的に攻撃を叩き込んでいた
だがまぁ、ちょっと安堵の息を吐くぐらいはいいだろう。少なくとも、倒せはしたんだから。ラスボスを。
「いやー、何とかなって良かったですね……」
「何とかなったでいいのかなぁ」
「どっちかっていうと、何とかしただろ」
エルル、それは言っちゃいけない。
……のだが。そのエルルは息を吐いて、ん? と私の方に視線を戻した。
「で、お嬢のそれはいつ解除されるんだ?」
「あれ、そういえば。もういなくなったんだよね?」
……左右から視線を向けられて、目を泳がせてしまったのは、誰か仕方ないと言って欲しい。
「……お嬢?」
「姫さん?」
「いやぁ……その。この奇跡、強力な分だけ縛りが多くてですね」
「自力解除が出来ないのか」
「でも、あの神様だと守る奇跡だよね? 敵を倒したんならもう守らなくていいんじゃないの?」
ははは。2人の勘が良くなってる。これもまた
そうなんだよな。この奇跡、自力解除は不可能だ。
「解除条件は、まず願った私が倒れる事。まぁこれは無いです」
「……まぁ」
「で?」
「次が、この鎧が壊れる事。奇跡の顕現中は継続的に耐久度が減っていきます」
「そうなの? ってうわ、よく見たらもう壊れそうじゃない?」
「元はどれだけ頑丈なのかと思ったが、壊せたのかこれ」
「たぶんこの分だと、あと数分あるなしでしょうか」
そう。それが残り時間だ。
そしてその会話が聞こえたらしい、たまたま近くに居たり、わたしの撮影会をしていたりした
そうだな。私が倒れるか鎧が壊れるか。それ以外の条件って言うと、まぁ絞られる。そして奇跡は、まだ解除されていない。
「あと……脅威が、無くなる事、ですね……」
「え? でも倒せたよね?」
「とりあえず今の所、他の気配は無いぞ?」
うん。
周りの
つまりな。
「……たぶん、この奇跡が切れたら、この空間が壊れます」
「は?」
「えっ」
「端から壊れて行って、それに追い立てられる形で、脱出できないとどうなるか分からない感じの事になります。……っていうのが脅威判定されて、それで解除されないんだと思います」
「は!?」
「何それ!?」
何それと言われてもな。よく言われるだろう?
家に帰るまでが遠足です、って。
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