第2781話 73枚目:まもる為に
パキ、パキリと罅が入っていく音を聞きながら、一番外側の防壁の上を、さらに外へと歩いていく。防壁の部分を越えて、作りかけの部屋の屋根の上へ。そして姿だけが「吞み餓える異界の禍王」だった異界の大神の分霊がいた場所を越えて、空気の足場を設置して、更に前へ。
1m、2m、3m。そこまで進んだところで、バキン、と、ひときわ大きく罅の入る音が響いた。ここが限界か。もうちょい近づいておきたかったけど。
旗槍は無いしいつものドレス鎧ではないが、領域スキルを2重に展開。種族特性も目視で調節して綺麗に重ね合わせ、一切の追加リソースの投入無しで半径3mの球体の形に展開。
「[護り給え、守らせ給え]」
【無音詠唱】と【並列詠唱】を使って自分の背後、防壁と部屋の天井が一体化している砦の上に壁系魔法を並べ、砦自体に防御魔法をかけていく。少々の魔法があったところでどうにかなるとも思えないが、まぁ、無いよりはマシだろう。
「[我らが宝を護り給え
我らが理由を守らせ給え]」
砦への防御魔法が一通り終わったら、今度は自分に防御魔法をかけていく。壁系魔法は設置型だから、魔力と時間の許す限りいくらでも設置できるんだよな。私の魔力ステータスなら当面持つから、増やそうと思えばどこまでも増やせるだろう。
「[我らの手が届かぬところを護り給え
我らの腕が届くところを守らせ給え]」
自分への防御魔法が終わったら、今度は片っ端からバフを乗せていく。本来はバフを乗せてから防御魔法をかけた方がいいんだけどな。優先順位を決めた時の順番でやっていかないと、祝詞の奏上を並行している以上、こんがらがりそうだったから。
「[護り給え、守らせ給え]」
再び大きな罅が入る音が響く。あと2回は無いだろう。まぁもう1回は大きな音が響いても大丈夫だろうが。落ち着いて行こう。
「[我らの証を護り給え
我らの柱を守らせ給え]」
とりあえず自分にかけられるバフは全部かけた。とはいえ、流石に宝石を食べてブーストしたり【魔力実体化】で二重バフをかけている余裕はない。後は全部壁系魔法の設置に回そう。
「[我らの踏み込めぬところを護り給え
我らの辿り着けるところを守らせ給え]」
また響く、大きな罅が入る音。恐らくこれでタイムリミット。次に大きな音が聞こえたら、きっとあの球体は砕ける。
「[我らが守り神
我らを護る神
我らと共に守る神
我らの
我らの
ビキ、と、ここまでと違う音が響いて、
「[我らの宝、我らの証、我らの未来
我らの理由、我らの柱、我らの現在
護り給え、守らせ給え]」
ガシャン、と、砕けた。
「[誓いをもって並び立ち
我らが心をこの身で守らせ給え
祈りをもって乞い願い
我らが愛をその力で護り給え]」
高音と低音が混ざった非常に不快な音が勢いよく高まっていく。まさか破れてから改めてチャージの時間があるとは思わなかったな。まぁお陰で祝詞が間に合ったけど。
「[どうかこの手で守らせ給え
決して譲り渡す事ができぬ故に
どうかその力で護り給え
我らで足らずとも繋ぐ為に]」
ぱん、と、柏手を1つ。
「――[
からの、
「[守る為に
護る事へ全霊を賭す為に
どうかその力を盾として
ここにお与え下さい]!!」
奇跡請願。柏手を打った手をそのまま前に出す。
同時に。
濁った灰色の光線が、発射された。
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