第2775話 73枚目:全力火力

 ただ、だな。

 神の力が減衰無しで届くようになって、影響力のせめぎ合いかつ空間の主導権の取り合いで、何なら異界の大神の力をどれだけ確保できるかって話なんだよな。

 なおかつ、とりあえず今確認できている範囲だけでも、攻撃や装備、そしてこちらのリソースを奪い取る能力が付与されている。もしくは付与できる。その範囲がどこまで広がるかは、まだ分かっていない。

 そんな相手に対して、防御寄りの姿勢でいるのは危険だ。何故なら、いつその防御ごとこっちのリソースや力を持って行くようになるか分からないんだから。……では、どうするのが最適かっていうと。


「まぁ、こうなりますよね」


 やはり種族スキルっていうのは大きいな、としみじみ思いながら、全力で【皇竜の鼓舞】と【王権領域】を展開する。儀式場としての場所が大きくなった事、この場所自体にある程度力が染み込んでいる事を含めても、さっきまでとは展開できる範囲が全く違う。主に広い方向で。

 それと、私は避けようも調節も無いって事で、全力で制御訓練してたからうっかり忘れていたんだが、【響鳴】装備を2つ以上つけていると、領域スキルの効果が自分に乗るんだよな。

 流石皇族専用というか、【王権領域】の補正量は大変大きい。展開中に細かく操作したりして意識する事が多いのは【調律領域】だが、本来なら無視できる効果量じゃないんだよこれ。というのはまぁ一旦さておき。最適解の話だ。


「当たり前っちゃ当たり前なんですけど。異界の大神自体は、ある程度こちらの神々とある意味顔合わせが済んでいる訳ですし」


 主に「敵を滅する」権能を持つ神の奇跡を、これでもかと「吞み餓える異界の禍王」に叩き込む。ティフォン様の炎の奇跡もそうだし、信者が正気を取り戻したというか真っ当に戻ったからか、至上主義とまで行かないが人間種族を重視する神の奇跡も混ざっているようだ。火力高いからな、あっちの神話。

 うん。まぁそれはそうだ。奇跡を願う側が判断するより、神の基準で判断する方が正確で速い。なので、外側(?)からの攻撃は大変順調だった。ステージボスも、出てくる端から神の奇跡か神の力を借りるアビリティで沈められている。

 そうなるとまた内部空間の進捗が遅れるのでは、という懸念もあるにはあるんだが……どうやら竜族の『勇者』サーニャが徘徊している方の「吞み餓える異界の禍王」へ痛打を入れた、と聞いて、他の『勇者』からも突入希望者が出たらしくて。


「……まさか、徘徊して襲撃してくる、逃げるしかないタイプのボスが、逆に追い回されるところまでいくとは思ってませんでしたけど」


 そういう事で、内部空間の攻略の方も大変順調らしい。もちろん徘徊する方の「吞み餓える異界の禍王」は異界の大神の力と、それを持っている召喚者プレイヤーや住民の仲間を狙って来るのだが、『勇者』はそんな「吞み餓える異界の禍王」を狙いに行く。そして実際、割とまともにダメージが入るんだそうだ。

 何というか、流石『勇者』だなぁ。いやまぁ、これが本来の『勇者』ってものなんだろうけど。世界の敵や異物に対する圧倒的なアドバンテージであり、世界を壊すものを倒し、世界を守る為の、神に覚悟を問われて行われる不可逆の進化。世界本来の特級戦力。

 ……なお、どうやら。召喚者プレイヤーの影響を受けて『勇者』に進化した仲間はそれなりにいるらしく。『勇者』そのものの総数が、初期に比べるとかなり増えてるらしい。


「……まぁ、エルルとサーニャもそうですしね」


 むしろあの2人がバランスブレイカー筆頭じゃないかって? まぁうん。

 でも2人の進化自体は必要だったし、そこに関しては一切後悔してないぞ。特にサーニャの時、運営からも妨害に対する妨害が無かった気がするが、進化させた事に関しては何も悪い事はしてないって胸を張るからな。

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