第2773話 73枚目:加速成功

 どうやらやはり最低限のステータスは残っていた事と、ちゃんとスキルの補正は生きていた事で、転んだりステップを間違えたりする事は無かった。本当に良かった。めちゃくちゃケミカルライト振られてる中で踊るのは……まぁその、流石にちょっと恥ずかしかったが。

 だがここで涼しい顔をしてこその皇女だろうって事で、頑張ってクールを維持だ。踊りに集中すればいいだけだしな。そもそも、間違えてはいけないっていうプレッシャーであんまり周りを見ている余裕は無かったし。

 で。儀式場で領域スキルを展開しながら踊る、というのはちゃんと効果があったらしく、他の場所でも同じようにやった結果、しっかり効果が出たらしい。


「全体連絡! 神の力を借りるアビリティの減衰が解消されたとの事です! また領域スキル無しの儀式場で力場の安定が確認され、施設拡張を加速する事が可能となりました!」


 そういう朗報が届いた時点で、それでも加速状態で1時間ぐらいか。思った以上に結果が出るのが早かったな。もちろん、こっちで踊るのに合わせて、別動隊の方でも何かしていたんだろうけど。

 さてこれで砦の拡張というか、「こちらの空間」としてこの世界の果てもしくは端から半歩進んだ場所を確保する動きは加速できる。踊りが不要になったという訳ではないが、無くても何とかなるだろう。

 ところで。神の力を借りるアビリティの減衰が無くなった。それはつまり、標準ぐらいには神の力が届くようになった、って、事でな?


「! 次の節目で一旦休止します!」

「休止了解!」


 踊ってる最中かつ音楽があるからか、何もしてないのにバイブに切り替わったのは本当に最高なんだがそれは別で感謝するとして。かなり久々な感じの「指針のタブレット」への連絡だ。もちろんボックス様もしくは“ナヴィ”さんからの啓示である。

 儀式用の踊りを一旦フィニッシュして、素早く「指針のタブレット」を取り出して画面を確認。何だ? ヒントか、警告か、アドバイスか?


『資材として使う物質は奇跡で願ったものに変えると良いでしょう』

「ほんと最高……んんっ。司令部、ボックス様から啓示です!」


 まぁそれはそう。

 それはそうなんだが、うっかり忘れてしまっているところだからなー。ほんとなー。召喚者プレイヤーが割とうっかりするんだって分かってくれて更にそこをフォローしてくれるとかなー。ほんっと最高。最高が過ぎる。最高以上の言葉を探さなきゃ。

 それでもぐっと顔を引き締めて、司令部に連絡だ。わざわざ今啓示が来たって事は、これが最短なんだろうし。そうだな。効率は少しでも上げて行かなきゃいけないからな。本当に最高。


「あー、それはそう」

「それはそうだけど切り替えれるかっつーと」

「土に神の力を付与する奇跡願えるから移動するわ」

「私も湧き水の奇跡行ける」

「おっけ、メンバー入れ替えな」

「録画はほんと念入りに頼んだ!」


 で、司令部に伝えるって事は、当然周りの召喚者プレイヤーにも伝わる訳で。そうだな。私の儀式というか踊りを見学しているより、働けるなら働いてくれた方が助かるな。その辺はちゃんとしてくれているから良かった。

 ……何か若干名駄々をこねている人がいるようだが、周りの人に引きずって行かれている。働いてくれ。ちゃんと観測班が撮影機材設置してくれてるから。それこそ3Dモデル用のデータに出来そうなぐらいの数を。

 なお私ももちろん湧き水の奇跡を願えるし、何なら灯りの奇跡も願えるようになっているだろう。が。


「領域スキルを展開しながらの踊り、というのは、あればあるほどいい方の行動でしょうからね」

「メンバー入れ替え完了!」

「撮影関係点検完了!」

「いつでもいけるわちぃ姫!」


 素早い。本当に素早い。結構な人数が入れ替わった筈だが、もしかして全員演奏系のスキルをそれなりに鍛えてるとかか?

 ……何の為に、って言ったら、こういう時の為なんだろうな。すごいなぁ。

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