第2770話 73枚目:連携ポイント

 加速状態で、残り、15時間。


「全体連絡! 突入した召喚者プレイヤーの一部が脱出に成功! こちらへ戻ってきているものの、大量のモンスターが出現! 迎撃をお願いします!」


 30分の仮眠でもかなり万全に近くなる、という事で、10分ごとに時間をずらしながら交代で休んでいたところに、司令部の人のそんな声が響いた。

 もちろん仮眠中の召喚者プレイヤーは起きる事が出来ないが、住民は別だし、吸い込みを止めるのが優先だって事で、相応の数のステージボスは出現し続けている。

 だからある程度以上の戦力は確保されていたし、順番に休んでいた分だけそれなりの人数が回復している。それに、腕と口によって大規模魔法は捕まえられる、とはいえ、わざと狙いの甘い大技を撃って捕まえさせて瘤にして、それを精密な遠距離攻撃で射抜いて至近距離で炸裂させる、という攻撃方法も取られるようになっていた。


「ようやくの脱出ですか……とりあえずは、脱出できるもので良かったですね」

「それはそう」

「出れんかったらどうすんだとは思った」

「それは消耗で死ぬだけなんよ」


 それに、突入先の情報が欲しいし大事だというのは召喚者プレイヤーと慣れた住民なら分かる事だ。結果として全力でステージボスの迎撃が行われ、脱出してきた召喚者プレイヤー達は無事砦に辿り着く事が出来た。

 で、もちろん即行で司令部の人が話を聞きに行って、共有された向こう側の情報はというと。


「…………まぁ、ありましたね。そういうのも」

「あったなぁ」

「あったあった」

「走り回ったわ。両方」

「してやられた苦い思い出……」

「今回大神官さんおらんのだが?」

「何とかするしかないんだろ」


 それは内部に無数のギミックがあり、それを解く事で、異界の大神の力を集め、魔族の王の力を倒し、力の純度を上げつつ内部をこちら側に有利にしつつ攻略していく……カジノの街と、図書街。或いは南北の大陸終盤で、完全に相手のものになった土地にあった神殿を再建させた。そういう攻略手順だった。

 ある程度異界の大神の力を集めると安全地帯を作れて、そこからある程度まとまった力を持ち出す事で脱出する事が出来たのだそうだ。なるほど、まとまった異界の大神の力を持ってたから、大量のステージボスが出現して襲い掛かってきた訳だな。

 どうやら一定以上異界の大神の力があると、吸い込みよりもステージボスによる襲撃を優先するらしい。だから神の力が込められたアイテムによる吸い込み阻止時間が過ぎても、ステージボスとの戦闘が続いているようだ。


「しかし、そうなると。最終的に、集めた異界の大神の力を全部持って脱出する事になるのでは?」

「その可能性は高そう」

「でも集めるのに時間かかりそうじゃね?」

「人手がいる、って事かぁ……」

「司令部も突入はしてるだろうけど、手数はいるだろうな」

「でもこっちの防衛戦もやんなきゃいかんと」

「忙しいな。いつもの事だが」


 本当にな。やる事が多い。本当に多い。今ですら割といっぱいいっぱいなんだが? だ。

 それでもやらない訳にはいかない。それに脱出方法が分かって、何なら脱出する必要があるっていうのも確定だ。最後の大陸で、結晶化した精霊さんを守りながら脱出した事を思い出すから、きっと脱出するのは正規ルートだ。

 実際、司令部は突入者を増やす方向で走り回っているしな。吸い込みが一旦止まっているが、どうやら内部に突入した人は、黒字に青色の体力バーを持つ徘徊型のボスのようなものを見ているらしい。それの体力バーは、残り8割半ほどだったとの事。


「外から見えているのが異界の大神の力の残量なら、その徘徊する奴のは、魔族の王の力の残量なんでしょう」

「どっちもゼロにしないといけないやつだぁ」

「そうか、魔族の方が半分いってないから進まないのか」

「やっぱ突入必須だったか……」

「でも突入しすぎると外で抑える戦力が足らんだろ?」

「本当に忙しいな。いつもの事とはいえ」


 何故なら、その徘徊する奴は。

 第二形態の魔族の王から杖を無くし、顔から鳩尾まで裂けたような口がある。そんな形をしていたそうだからな。

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