第2768話 73枚目:行動対処
領域スキルの強度を上げる、という方向で動き出したものの、まだ領域スキルを持っている人の大半が本調子じゃない。何故なら、既に割といっぱいいっぱいのところまで強度を上げていたからだ。
そこから更に上げろと言われても、そう簡単には上げられない。領域スキルを取り返して前に出ていた人が戻って来て、砦が増築されてより増幅率の高い儀式場が作られて、それでいくらか強度は上げられるが、吸い込みで空間が縮む影響に勝てるものではないだろう。
となると、必然的に領域スキル保持者がリソースをつぎ込む事になる。ははは、全く、良かったなぁ。
「吸い込み中はモンスターの出現が無い、が、確定していて良かったですねぇ……!」
「あーそっか、このタイミングで体力喰われたら即死するしかない」
「範囲も広げてるから防御間に合わないだろうし」
「どんなに耐性あっても7割は持ってかれるもんなぁ」
「倒せば戻ってくるとは言え、無理は無理よ」
みたいな事を言い合いながら、可能な範囲で領域スキルの強度を上げる。防御力を上げながら儀式的な増幅が出来る形での砦の増築もされているが、やっぱりちょっと追いついていない。
それだけ吸い込みが強いって事なんだが、これ、全員強制突入じゃないだろうな? って疑いを持つ程度には厳しいぞ。もしくは内部空間で何か詰んだか、あるいは思った以上に難易度が高いか、なんだろうが。
……もしくは、「第一候補」を含んだ、神の力に関するあれこれを得意とするメンバーがほぼ丸ごと別動隊として分断された、その時点でダメだったのかもしれないが。けど、「第一候補」があのスキルを持って行く攻撃を食らってたら、それこそ大惨事だっただろうしなぁ。
――ドン!
「ん?」
「なんだ今の」
「あれ、負荷軽くなった?」
とか思いつつ、つぎ込むリソースの量を回復分+2割から3割に増やそうか、と思ったタイミングで、どこか遠くから響いた感じの、爆発音が聞こえた。同時に誰かが気付いた通り、領域スキルの維持コストが下がっている。
これはまさか、と誰が言うでもなく、司令部の人に視線が集まった。ぱぱぱ、と相変わらずメニューや掲示板を操作していた司令部の人は、集まった視線に気づいて顔を上げ、
「どうやら吸い込みが領域スキルや『勇者』に対応し始めたという事で、神の力が込められたアイテムを吸い込ませたらどうなるのかという検証が行われたようです。現在結果確認中ですが、口と思われる部分の奥でアイテムの効果が発動、結果爆発が起きて、「吞み餓える異界の禍王」の動きが止まったと報告がありました。一時的なものと思われますので、警戒は続行して下さい」
やっぱりか。やっぱり司令部というか検証班だったか。まぁたぶんそうだろうなとは思ったけど。
しかし吸い込みに合わせて神の力が込められたアイテムを放り込んだ、となると、かなり奥の方まで届いたんじゃないだろうか。そしてここまでの感じ、ダメージを与えるとステージボスが出現するから……。
「全体連絡! 大量のモンスターが出現、領域スキルの範囲拡大を一時止めて、砦の内側まで範囲を狭めて下さい! それ以外の方は防衛の開始をお願いします!」
……まぁ、そうなるよな。
ただ、今の全体連絡を聞いて掲示板を確認する限り、どうやら大量のモンスター(ステージボス)が出現しても、ラスボスの体力バーに変化は無かったらしいんだよな。
だがモンスターが出てきたって事は、何らかのリソースを使ってるって事だ。じゃあ何を使ってるんだって事になるんだが。
「……突入組の状況が知りたいですね。向こうが苦戦している上に攻略必須なら、『勇者』に突入してもらう必要もあるでしょうし」
「司令部、向こうの事は分からんの?」
「今の所連絡は完全途絶状態です」
……さ、流石にまだスキル自体が消えたりはしてないから。スキル一覧に載ってるから。
まだ取り返せる。大丈夫。……な、筈。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます