第2767話 73枚目:順調危機
さてステージボスに新たな行動パターンが増えた事で、時々領域スキルを維持している組が瀕死になるようになった。が、元々領域スキルの範囲にラスボス「吞み餓える異界の禍王」を含める事でダメージを入れてステージボスを出現させていたから、その分の戦力を守る方に回せばいい。
ステージボスが出現し続ければ、「喰奪」状態のスキルが戻ってくる。それはこちらからダメージを与えた分でも、自主的に出現させる分でも変わらない。1度持っていかれて瀕死になるって事は、うっかり2度持っていかれたら確実に死に戻るからな。
ここで領域スキルを切る訳にはいかないから、こっちを守るのは妥当だろう。多少とはいえ、吸い込みを受けて「吞み餓える異界の禍王」の内部空間に人が移動して、こっちの人数も減ってるんだし。
「いやぁ瀕死キツいわ……」
「上限を持っていかれるのはちょっと」
「中身なら回復すればいいのになー」
「だから上限なんじゃない?」
「それもそうか」
幸い、と言っていいのか、そういう調子だから「吞み餓える異界の禍王」に対するダメージ量は変わっていない。だから対して時間がかからず3段目で最後の体力バーが6割を切り、吸い込みが発生するところまではいった。
吸い込みで移動できる内部空間というのがどうなっているのかというのは不明だし、未だに連絡がつく気配も無ければ何か情報が増える様子も無い。空間が違うって言うのは面倒だなと思いながらも、色々推測しつつ領域スキルを維持していた訳だが。
「……何か、長くありません?」
「長いと思う」
「司令部、これ残り体力5割の特殊行動よな?」
「その筈です」
3段目の体力バー。黒地に青色のそれが半分になったタイミングで、ここまでと同じく吸い込みが発生し……それが、いつまで経っても止まる様子を見せない、という変化が起こった。
当たり前だが、吸い込み行動中はこちらから攻撃する事は出来ないし、ステージボスも出現しない。吸い込まれるからな。そしてここにきて一定出力以下の領域スキルや『勇者』も引っ張られるようになったので、安全の為に距離を取っている。
流石に全員が内部空間に移動する必要がある、って事じゃないだろう。辛うじて連絡が取れる「第一候補」によれば、こちらの座標を特定し続ける必要があるらしいし、何ならこの空間が狭くなる程に必要な領域スキルの強度は上がっているようだから。
「内部で何とかしてもらわないとダメなターンに入りましたか」
「それっぽい」
「まぁ領域スキルとか『勇者』が吸い込まれるんなら、突入できるようになったかもしれんけど」
「それで突入して、スキル全取りされたらシャレにならん」
「可能性的にあり得るのがなー」
流石にこの砦に展開されている強度の領域スキルであれば、吸い込みの影響は受けない。だから異常があっても比較的余裕をもって待機できていた訳なんだが。
「全体連絡! 大神官さんより、空間の急激な収縮は危険度が高く、帰還の可能性が著しく下がるとの事! 急ぎ吸い込み行動を止める方法を探すか、領域スキルの範囲及び強度を上げるように、と!」
「そういえば空間が縮むんでしたっけ、あの吸い込み……!」
「そういやそうだった、残り時間縮むんだった」
「とりあえず領域スキルの強度上げるぞ!」
「けど全員揃っても限界はあるが!?」
「生産組に砦を儀式場寄りに増築してもらうぐらいしかないだろ!」
そうだな。あの吸い込み攻撃は「膿み殖える模造の生命」と同じ、空間の残り時間を削るものだったな。そしてそれが止まらないという事は、咆哮が止められていないのと同じだ。
領域スキルの強度と範囲を上げろというのは、たぶんだが、領域スキルの範囲はこちらで制御できる空間っていう扱いになるからだろう。ほとんど世界の外と言える場所で、安定しているって事だからな。
とはいえ、私が持っていかれたスキルはまだ1つも戻ってきていない。もちろんフル装備かつ旗槍を使っているから、相応に種族特性と【皇竜の鼓舞】は強化されているが、それでも普段からすれば出力も低いし範囲は狭い。
「突入組には何とか頑張ってもらいたいところです!」
「それはそう!」
「たぶん向こうも苦労してるだろうけど!」
「帰れないのはシャレにならんのよ!」
マージでどうするかな、これ。内部突入組には急いでもらいたいところだけど、それを伝える方法が無いのが一番問題だ。
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