第2766話 73枚目:変化内容

 その後検証班によって確認された結果、どうやら持っていかれたのは「体力(HP)、魔力、スタミナの上限9~7割」で確定らしかった。割合だったか。なお上限が下がった訳では無く、それ以上回復しなくなる、という形なので、ずっと瀕死、という事になるらしい。

 そしておよそ3人から5人分のリソース上限を「喰奪」したステージボスは、これもヘイトを無視して「吞み餓える異界の禍王」のところへ戻ろうとする事が判明。明らかに回復されるか、少なくとも何かに利用されるって事で、即座に撃破される事となった。

 ただ1つだけ幸いだったのは、「喰奪」したモンスターを倒した瞬間に、リソースは戻って来たって事だ。スキルは光の球体みたいなものが出てきて、それに本来の持ち主が触る必要があったんだが、そういう事は無いらしい。


「まぁ同時に、「喰奪」したものは瘤の形にならないという事も判明しましたけど」

「瘤になるのはいらんものだけなんやなって」

「見つからない訳だよな」


 なお、少なくともここで領域スキルを維持しているメンバーに関して言えば、領域スキルの範囲を、それこそ砦の壁一枚内側にすれば直接触れられる事は無くなる。それを砦の周囲1m程まで広げているのは、ここにきて【界外環境耐性】を抜かれる人が増えてきたからだ。

 司令部によれば、時間経過もしくはあの吸い込みによってこの場所自体が狭くなってきているらしい。つまりより世界の外に近づいているという事で、全リソースにスリップダメージが入るようになったようだ。

 もちろんしっかり星金を使った装備をいくつも身に着けて、【界外環境耐性】の総合レベルを上げていれば問題ない。が、それがちょっと甘かったり、装備の都合上そこまでアクセサリや予備武器を増やす訳にはいかなかったりする人はどうしてもいるようだ。


「……星金は加工が大変ですからね。基本単体でしか装備に出来ませんし」

「それな。金属糸にして裏地に取り入れればいくらでも着けられるのに」

「性能自体は【界外環境耐性】抜きでもまぁまぁいいのが更に惜しい」

「かといって単品で服とかにすると流石に重いんだわ」

「ロングソードぐらいの塊を持てれば結構な補正がつくんだけどな」

「そうなるとメイン武器が持てんのよ」


 当たり前だが、うちの子の装備に星金が素材の1つとして複合的に使われているのは特例中の特例だ。主にヘルマちゃんによる超絶技巧のレース編みがあまりにも特殊だからな。もちろん外に出している余裕はない。うちのクランだけで何人いると思ってんだ。

 ……ただ若干名話を合わせながら視線を逸らしているので、星金を金属糸にしてレースを編み切れば、効果が更に乗せられる上に他の素材と組み合わせられる、っていうのに辿り着いた人は他にもいるらしい。まぁ、一度は考えるだろうけど。

 アラーネアさんのところでも一般販売してないどころか、どこにもその情報が出て無いって時点でその難易度が伺えようってもんだよ。自力で到達しないと手に入らない装備になってる。


「そういやちぃ姫のとこって全員平気そうだよな?」

「エルルとサーニャが耐性共有対象に入ってますからね」

「それはそうか」

「そういや効かないんだっけ」

「やっぱ『勇者』強いなぁ」


 もちろん言う訳ないんだよな。ルディルやルージュに続いて、ヘルマちゃんまで過労枠に入ってしまいかねない。耐性系は誰でも無限に欲しいからな。

 しかも星金のレースの場合、レースにしてしまえば後は組み合わせ自由な上に、レースの模様で魔法陣を描けば任意の効果を乗せられる。そんなもん、いくら作っても需要に追いつく訳がない。

 作れるのはヘルマちゃんしかいないからな。ダメだぞ。というか、だからこそ組み合わせ出来る方法、星金の金属糸でレースを編むっていう方法に気付いた全員が、示し合わせてないのにしっかり情報を隠してるんだろうし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る