第2765話 73枚目:次の変化

 という事で、やる事は特に変わらないのでそのまま、3段重ねの体力バーの内、一番下の体力バーが8割を切った。

 その瞬間に再び強い吸い込みが発生したが、効果と防ぎ方は変わらなかったので、今度は覚悟済みで最初から突入する予定の人だけが吸い込まれたようだ。

 ただ相変わらず連絡は取れないので、吸い込まれた先がどうなっているのかは分からない。……この空間の端を調べるのに、それなりの人数がロストしてるからな。もちろん死に戻りで通常空間に戻っているんだろうが、探索に長けた人が多かったのも確かだ。


「さて次の節目は残り体力7割ですが、何が起こるか予想していきましょうか」

「大喜利とも言う。吸い込み範囲の強化はあるよな?」

「あると思う。問題はその範囲だ」

「距離では逃げられなくなるとか?」

「『勇者』は吸い込まんだろ」

「領域スキルは……まだ安置だと思いたい」

「攻撃に使ったスキルが持ってかれるようになる」

「じゃあ攻撃に使った装備が持ってかれるようになるで」

「吸い込みがスキルを含むようになる」

「距離によってスキルを持っていかれるようになる」


 わいわいと候補を出していく。まぁ大体このうちのどれかが当たるだろう。全部って可能性もあるが。どれか1つでも十分すぎるんだよなぁ。せめてもうちょっと後の節目で出てくるやつであってほしい。

 なお私の予想は、出てくるステージボスにスキル捕食もとい「喰奪」能力が付いてくる事。もちろん口に出して共有しておく。実際そうなったら大変だろ? 外れたらそうならなくて良かったねで済むけど、当たったらちょっと致命的だ。

 まぁ取り戻す方法はあるし、ステージボスだった種別レイドボスは倒せるから、倒せば取り返せると思うんだが……スキルを制限されると、そのスキルによっては、それこそ私みたいになりかねないからな。


「スキルが取られて持ち帰られたら回復に使われるとかもありそうですし……」

「確かにありそう」

「内部突入班の妨害に使われるのもあるかも」

「それもありそう」


 ほんと、何が来るんだろうな? と思っていると、一番下の体力バーが7割を切ったらしい。案の定吸い込みが発生し、今度も覚悟済みの人以外は耐えられたようだ。

 ただ今回は、領域スキルを展開していても少し吸い込まれたとの事。完全防御とはいかなかった感じか。ただその吸い込まれた距離は場所によって違うし、私のいるこの場所はほぼ変化が無かった事から、出力によって影響が変わるのでは、という風に推測されている。

 さて、吸い込みという特殊行動は思ったよりも大人しかった訳だが。そうなると、出てくる取り巻きことステージボスに何かしらの変化がある、という可能性が高い訳で。


「……増えてね?」

「増えてるなぁ」

「ま、まぁ増えただけならまだ」

「増えるだけで済む訳ないだろしっかりしろ」


 実際、変化は新しく出現したステージボスの方にあった。具体的には、1体に1つだった口と腕のセットが、ステージボスの大きさに合わせて複数付いてくるようになった。

 まぁそれだけなら何も問題ない。避けて攻撃するだけの面積も技量もあるし、そもそも魔法を捕まえられて瘤に変えられても、瘤を攻撃して爆発させればちゃんとダメージは通るんだ。

 が。やっぱりヘイトが全力でこちら、異界の大神の力を封じた球が保護されているこの砦に向けられているらしく。様子を見るのもあってか、その内の1体が通されて砦に取り付き。


「ごはっ!?」

「ちょっ、回復!」

「ちぃ姫――はそうか出来んかったな!?」

「リソースの共有は無理ですので、普通に回復しますね」


 口と腕でセットになっている腕が、砦に触れた。瞬間、領域スキルを維持していたうちの1人が、結構な量の血を吐いた。

 慌てて周りから回復するが、そうこうしている内に別の1人が血を吐く。もちろんそっちにも回復が飛ぶ。の、だが。


「……。もしかしてこれ、リソースの「最大値」か「上限」が持っていかれているのでは?」

「は!?」

「いや、それっぽい……領域スキルの維持に持ってかれる量は変わらんし、回復あってもずっと瀕死はおかしい……」

「えっそれならこれ、倒したらどうなる!?」

「スキルと一緒なら本人にしか回収できない筈!」


 回復しない。というのを確認してそう予想したのだが、本人の体感的にはそんな感じらしいな。

 詳しくは検証班か観測班の人に【鑑定】系スキルを使ってもらうのが確実だが、たぶんそういう事だろう。

 ……割合か絶対値か、それが問題だな。もちろんどっちでも問題だが。

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