第2764話 73枚目:特殊行動
で、「吞み餓える異界の禍王」の残り体力、3段になった体力バーの一番下が、9割になったタイミングで何があったか、というと。
「……なるほど。だから、領域スキルが」
一言で言うなら、強烈な吸い込みだ。顔の全てからみぞおちの辺りまで縦に裂けたような口へ、多少の踏ん張りなど意味は無い、というように、近くにいた人の大半は吸い込まれてしまったんじゃないだろうか。
無事だったのは、『勇者』と、『勇者』が捕まえて庇えた人、特殊行動に備えてしっかりと距離を取っていた組、そして領域スキルとその効果範囲にいた人だった。
もちろんこの砦まで吸い込みは届いていたのだが、表面から少し内側に引っ込めたところまで領域スキルを展開し続けていたので無事で済んだ。最前線は大変な事になっているが。
「司令部、吸い込まれた人との連絡は取れますか?」
「確認中です。が、即死した訳ではなさそうなので、恐らく「吞み餓える異界の禍王」の内部に別空間があると思われます」
「来たか、内部探索」
「ある気はした」
「内部にあの球持ってったら痛打になりそうな気配」
「何か連携する必要があるやつだな」
まぁでも司令部はちゃんと動いていて、それなりにしっかりと距離を取っていた人はいたようなので、攻撃は続行されている。そもそも、この砦を防衛する戦力はほとんどそのままだ。一応吸い込みは届いたが、距離があったし領域スキルで砦自体が固定されてるからな。
即死した訳ではなさそうっていうのは、たぶん片方が壊れたら連動して壊れるとか、そういう装備やアイテムがあるんだろう。空間を越えると通らないものも多いが、持ち主の命に紐づけられてたら大丈夫だった筈だし。
しかし、やっぱりあったか内部探索。もちろん環境的には更に悪いだろうし、それこそ一定レベル以上の【界外環境耐性】が無いとろくに探索できないって可能性も高いが。
「ともあれ、これぐらいの特殊行動で、移動する必要があるというなら、1割ごとに繰り返してもおかしくなさそうですね」
「あー」
「せやな」
「防ごうと思えば防げる以上は、うん」
「つか『勇者』が対象外になってる時点で手分け必須なんよ」
「耐性必須なら応援も欲しいだろうしな」
戦力配分が大事になる訳だが、その辺は司令部にお任せする事になるだろう。とりあえず今も、誰が吸い込まれて誰が残っているのかを絶賛確認中だろうし。
しかし『勇者』が対象外か。まぁ領域スキルで防御できるのならそれはそうだろうが、これはどっちかっていうと『勇者』みたいな祝福と加護の塊みたいな存在が突入すると、空間自体が崩壊するぐらいの致命的なダメージが入る、みたいな不具合の方向の気がするな。
大神の方は一応こっちの世界に認められているし、大神同士で連携してるようだから
「とはいえ、この場で出力の高い領域スキルを維持するのを止めると、帰り道が大変な事になりそうですしね」
「それはそう」
「その辺の戦力配分は、司令部頼んだ」
「現在領域スキル保有者の人数などを考え、各クランと調整中です」
まぁでも、1割は削れたんだ。内部空間と連携しないと削れなくなるとかにも(まだ)なって無いし、ペースを出来る限り上げつつ削るのは続行だな。
……にしても、私のスキルが出てこないな。たぶんここまでの感じ、強力なスキル程取り返すのに時間がかかるというか、「吞み餓える異界の禍王」が手放さないとか、そういう感じなんだろうけど。
種族スキル、返してくれないかなー。流石にここまでステータスが落ちるとは思わなかったんだが? その分だけしっかり補正が入ってたって事なんだろうけど。それこそ、素のステータスが竜族にしては低め、っていう種族特性を覆すぐらいに。
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