第2762話 73枚目:奪還手段
……ダメージを与える事で、取り巻きが出現する。
実は、何か覚えがある気がしたんだよな。
「何かこれって、最初のレイドボスっぽくね……?」
領域スキルを維持している組でわちゃわちゃ色々推測したり情報整理してたりしたんだが、その中でぽつっと誰かが呟いた。
そう。それだ。確かに。そんな同意の声が上がる辺り、大体全員覚えがあったのだろう。
で。最初のレイドボスと同じか、それに近いって事、は。
「まさかこの空間も時間制限付きで、更に縮められるとか……?」
「いや時間制限はついてるけど、司令部!」
「端と思われる場所まで辿り着いた際の地図は共有しています。今のところ変化はありません」
「まぁあれも咆哮がキーだったもんな。まだ何も動いてないし」
「てことは、体力が減ったらやらかしかねない?」
「つーかもしかせんでも、喰われたスキルで回復するって事じゃ」
「ダメージ与える前に回収せんとアカンやつじゃねーか!?」
「だから回収ってどうやってするんだって話だよ……!」
「あの時は確か青い目玉だったよな!?」
「護符な。そういう形のガラスで出来た護符な。ただ相手がなぁ……」
っていう可能性が、あるな? と。
まぁあの時も、救出対象を全部救出したらその後が大変だった訳だが。何しろ咆哮が止まらなくなって、「第二候補」と餅つきみたいに咆哮を潰し続ける事になったからな。
そういえばあの時は、核が別の場所にあって、それを探すのにもうちょっと時間がかかったんだったか。という事は、と司令部の人を見ると、ずばばばば、という感じでメニューというか、メールや掲示板を操作しているようだ。
「護符はありませんが、つまりは神の奇跡か神の力を使えって事なんでしょう。……そうだ、司令部」
「何でしょう」
「私が納品した、神の力を込めた球ってどれくらい残ってます?」
「! 確認します」
となるとあの時、「膿み殖える模造の生命」から長毛黒猫型魔物種族、蔵猫族を助け出した時のように、何らかの手段で喰われたスキルを取り戻せばいい筈……と思って、それが出来そうなものに思い当たった。
具体的に確認を取ると、それで全てを察したのだろう。さっきまでも十分に早かった手の動きが更に加速して、霞んで見えるようになった。
で、普通に口に出すと、領域スキルを維持している組にも聞こえる訳で。
「ちぃ姫が納品した……あー」
「あれか。あれだな。要救助対象は守るけどその周りは吹き飛ばすやつ」
「初めての2体同時レイドボスの時はお世話になったわー」
「なるほどあれならいけそう」
「……つーか“神秘にして福音”と“細き目の神々”だよな? そのまま異界の大神の力も分離できそうな気がするんだが」
「せやな。どっちも確か異界の大神と仲良かったろ」
うん。爆発する某捕獲ボールと呼ばれたあれだ。そして異界の大神の力も要救助対象というか、保護・確保対象になっているのでは、っていうのは私も思った。
それにこの戦いが始まる前に、出来るだけ作って納品していた。途中、通常空間での攻略中に多少使ったかもしれないが、それでも大半は温存できている筈だ。今どこで誰が持っているか分からないけど。
まぁ無限に使える訳では無い。数には限りがある。だからそれだけで決着がつくって事は無いだろうが、それでも、持っていかれたスキルを取り返すぐらいは……いけるといいなぁ、と、思いたい。
「……大半は大神官さんの預かりとなり、別動隊の所にあるようです。が、司令部の方でも保管されていたものがありますので、まずは数個使ってみて様子を見る事になります」
と思ったんだが……そうか、「第一候補」の所かぁ……!
いやまぁその判断自体は間違ってない。神の力だからな。使いどころの判断は「第一候補」の方が正しいし、神の力に関する対応をするのはおおむね「第一候補」である事を考えると、そこにあるのが一番だろう。
別動隊とはいえ、流石に、ここまで実質分断されるとは思ってなかった、って、だけで。
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