第2761話 73枚目:ダメージ法則

 もちろん領域スキルを維持している組で出した推測は司令部の人も聞いている訳で。召喚者特典大神の加護が生きている以上は素早く情報を共有する事が出来る。

 ただその結果、司令部が出した判断は「それでは条件が足りない」だった。まぁ最前線には『勇者』が何人かいるからな。神の奇跡、神の力を喰わせる、というのであれば、『勇者』の攻撃は全て神の力が乗っているからな。

 それでは瘤になるだけだったらしく、何か追加条件が必要だろう、という事になったらしい。まぁ、そうか。そうだな。


「エルルとサーニャの攻撃が瘤になった以上、神の種類ではないでしょうし」

「でも少なくとも火力はいるよな? あの灯りだし」

「圧倒的にモンスターを焼き祓う火力があったからレイドボスの体力が目に見えて減ったんでしょうね」

「でも火力だけでもダメって事かぁ」

「灯りの奇跡が通ったのは間違いないんだよな。攻撃との違いってなんだっけ」


 うーん。としばらく考えた結果。


「……。敵味方識別が必要なのでは」

「え?」

「そうなん?」

「全くダメージが入らないという訳では無いですけど、少なくとも、燃えている範囲に入っても燃え移らない、ぐらいはして頂けてましたし……」

「……そういやそうだな」

「大神の力を避けて魔族の王に当てる、って事?」

「あー、それっぽい」


 火力以外の灯りの奇跡の特徴、と考えて、思い至ったのはそれだった。そうだな。ティフォン様の奇跡は基本、敵だけを焼き尽くす。近づき過ぎたり余波の範囲に居たりしてダメージを食らう事はあるが、まぁそれは竜族ってものを考えれば仕方ない。

 で、実際、その辺こう「敵だけに影響がある」系の攻撃を『勇者』にしてもらったところ、特大の瘤が出来てステージボスが複数体同時に出現すると同時、体力バーが削れたそうだ。

 ただのステージボスならここまできた召喚者プレイヤーならどうとでも出来る。だから、数が出てくる事自体は何の問題も無い。むしろ段々ステージボスの数は減ってきていたので、補充されたと喜んで殴りに行った召喚者プレイヤーがいるぐらいらしい。


「そういえば、ステージボスってどこから出てくるんですか?」

「瘤を一定時間以上放置する事か、攻撃を繰り返して成長させる事であり、何もしなければ追加出現はしないようです」

「……。てことは、最初のあの数って」

「まぁちぃ姫が全力で願った奇跡やしな」

「つーか同時に領域スキルと種族スキル喰われてた事考えると……」


 あ、うん。ティフォン様なら全力で燃やすわ。イケオジだもの。召喚者とはいえ、竜族の皇女わたしに致命的なダメージを入れた相手には容赦しない。何なら割り増しで燃やすだろう。

 そしてその火力マシマシで燃やした結果が、あのステージボスの群れ。なるほど。筋は通るな?

 で、今は敵味方識別が出来る攻撃を『勇者』に連打してもらって、周りの召喚者プレイヤーで出てくるステージボスを倒す事で少しずつ体力バーを削っているらしい。ただ減り方があれなので、他の手段を探しているようだが。


「そもそも、領域スキルを取り返せれば問題ないんですが」

「せやな」

「それこそ灯りの奇跡の松明を用意すればいいだけの話」

「まぁ他にも敵味方識別できる神の力による攻撃はあるし……」

「そういや司令部、その条件だと浄化系の攻撃も対象になりそうだけど、どうなん?」

「試しましたが、どうやら元が魔族であってアンデッドではないからか、効果が見られませんでした」


 浄化系はダメなのか。灯りの奇跡というか、ティフォン様の炎も浄化と言えば浄化なんだろうが、こう、柔らかくするタイプはダメって事なんだろうか。それともやっぱり火力が必要って事か。

 まぁダメージは入ったんだ。だから体力は削れて行ってる。この調子で領域スキルを始め、持って行かれたスキルもその内出てくるといいんだが。

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