第2760話 73枚目:糸口思索
本体を確認して体力バーも見えた。なら後は叩くだけ、と言いたいところだが、残念ながら「呑み餓える異界の禍王」はギミックボスだ。このまま一気に袋叩き、といってしまいたいところだが、そうはいかない。
何故なら、「呑み餓える異界の禍王」に直接攻撃が届いたものの、体力バーはドット1つ分すらも動かなかったからだ。それだけではなく、その場所が瘤になった。つまりは捕まえられたって事だ。
瘤に攻撃しても膨らんでいくばかりで、それが一定サイズを超えると、山ほど出てきているステージボスに変化して襲い掛かって来たらしい。もちろんその間、観測班が確認している限り、体力バーは一切変化していない。
「……むしろ最初に削れていたのが何だったんだって感じですね、これは」
「回復は回復したんだっけ?」
「あの口や手に回復当てても回復しただけだった筈」
「体力バーの上限越えて回復しなくて良かったって言うべきか」
「たぶん回復じゃないんだろうなぁ」
「まぁ今までが今までだったし」
つまり、削り方が分からない訳だな。最初は気持ち削れていたのが、色々試している間に一番下の体力バーが満タンになってしまったし。それ以上に回復しなくて良かったというべきか、あるいは何かトリガーが必要なのかと疑うべきか。
……うん。流石にな。ここからは普通のレイド戦だと思いたい。ギミックはあるけど、普通に攻撃してダメージを与えて体力を削り切るのが正解だと思いたい。ラスボスだからな。素直に倒させてほしい。
とはいえ、耐久戦はさっきの第二形態でガッツリやったから、まだ耐久戦の続きって訳では無いだろうしというか続きは嫌だ。殴って解決できる、もとい攻撃して体力を削っていく形がいい。
「元と違う所に攻撃しても瘤になるだけかぁ……」
「冠の残骸って何だったん?」
「形は良く分からないとさ。残骸過ぎて」
「あの灰色になってた冠じゃねぇかなって気が」
「それはそう」
で、色々試している訳だが、とりあえず今の所何も効果は無いようだ。どこかのクランがステージボスに追加された口と手を集中攻撃して大量の瘤を出現させ、「吞み餓える異界の禍王」の近くに誘導してから撃破したらしいが、それでも瘤が増えるだけだったらしい。
一度ステージボスに捕まえられたから通るようになるという事も無く、武器で直接攻撃した場合は相当な耐久度が持っていかれるらしい。もちろん使い捨ての副武装は帰ってこないし、本体に触ったら防具でも耐久度が減るようだ。
じゃあ本体以外に何があるんだ、と、この空間を探しに行った
「――探索班、反応ロストしました」
「今のが最後の1班だったように思うんですが」
「全滅かぁ……」
「まぁ明らかに世界の果てか、半歩ぐらい外に出てる感じだもんなぁ……」
「限りなくゼロが、完全にゼロになったと」
という事で、あとはどこをどう探せばいいんだよ? とちょっと全く当てがない状態になってるんだよな。流石に今いるこの拠点でどうこうっていう事は無いだろうし。
本当に最初の、体力バーが見えた瞬間に入っていたダメージが謎だ。あれはどうやって入ったものなんだ? 流石にスキルを食わせたらダメージになるって事は無いよな?
喰らって奪う。そういう字が当てられている事と、スキルで分かった正式名称「呑み餓える異界の禍王」から考えて、喰われているのは間違いないし飲み込まれているのも正しいだろう。だから消化まで時間がかかるか、消化できないんだろうし。
「毒って誰か試した?」
「瘤になったって報告あるよ」
「まぁ喰ってるなら魔法もそうだもんな」
「つまり一瞬でも食べ物判定されないといかん訳か」
「回復は回復するからな」
「回復判定でダメージが発生するもの?」
「異界の存在特攻か、異界の存在にしか効かない毒って事?」
「……あれ、え。……えっと、ちぃ姫ちょっといい?」
「なんでしょう」
うーん、と領域スキルを維持した状態であれこれ考えていると、1人が何かに気付いたようだった。そして私に話を振ってくる。
正直ここで私に話が振られるって時点でだいぶ嫌な予感がする訳だが、まぁ嫌な予感がするって事は恐らく正解って事だ。覚悟を決めて聞くとしよう。
「あのさ……領域スキル喰われた時、ちぃ姫、奇跡維持してなかった……?」
「……してましたね。敵を滅ぼす権能持つ神の、灯りの奇跡を……」
そう問われ、そう答えたところで、全員思い至ったのだろう。恐らくあのラスボス、「吞み餓える異界の禍王」にダメージを与えるには、
これの何が悪いかって言うと、だな。
「先回りして言っておきますが、神由来の領域スキルは2つとも持っていかれましたし、そもそも種族スキルの1つが持っていかれているので、今は願えません」
「だよなー」
「それはそう」
「つーか俺らも無理だし」
……こんな場所で奇跡を願うには、領域スキルが必須な上に願う本人が万全でなきゃ無理って事だ……!
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