第2758話 73枚目:初撃結果

 ここで改めて時間を見ると、どうやら砦作成は1つで半時間ほどだったらしく、こちらに突入してから2時間強が経過していた。私が突入を事故って(?)本体を引きずり出し、ステージがこうなるまでに半時間ぐらいが経過してるから、3時間弱。加速状態で残り19時間ちょっとか。

 そろそろ休憩というか仮眠を挟まないと回復が追いつかなくなってくるぐらいの時間だが、流石にそんな呑気な事を許してくれる相手ではなかったらしい。


「しかしまぁ……」


 私は数名の、領域スキルが残った召喚者プレイヤーと共に砦に入り、確実な安全地帯であると同時に、とりあえずあちらも生存を確認できた別動隊への目印である領域スキルを展開している。

 どうやらさっきの一撃でごっそり領域スキルが無くなったのは別動隊こと「第一候補」達にとっても痛手であり、種族特性が領域スキル判定の私を目印にする事で辛うじてこちらの座標を把握できていたとの事だ。なお、その分の負荷がかかっていたから余計に再生力が落ちていたらしい。

 なので残った領域スキル持ちで集まって、範囲はそこそこでも出力の高い領域スキルを展開すると、それなりの速さで傷は塞がっていった、の、だが。


「……どこかで見たようなモンスターばかりが次々出てきますね」

「ほんとそれ」

「具体的にはあのステージボスじゃん」

「どこまで行ってもレイドもどきか……」


 砦は壁が分厚く何重にも作られ、こんな場所なのだから後に残る物でもないだろうと、防衛力最優先で窓の1つもない。だから外の様子は観測班の中継動画頼りなのだが、そこには無数の大型モンスターが、ラスボスのいる方向から襲い掛かってくる様子が映し出されていた。

 そう、「狂い崇める外法の禍壁」のところで出てきた、種別はレイドボスとなっていた実質のステージボスだ。本体である「狂い崇める外法の禍壁」との戦闘に入ったら、雑魚扱いで嫌と言うほど数が出てきたあいつらである。

 どうやらここでも無限召喚される取り巻き扱いのようだが、その姿には明確な違いがあった。文字通り見れば分かるその変化は。


「たぶん、あの手に捕まったら口に放り込まれるんでしょうし」

「というか、魔法も捕まえられてない?」

「捕まってるしそれで瘤が増えてる」

「まぁ、回復するよりはマシ。たぶん。恐らく」

「倒したら爆発するって事は、瘤に攻撃当ててもダメなんじゃね?」


 縦に裂けたような「口」と、その両脇から伸びる1対の「腕」だ。「凍て食らう無尽の禍像」や立体パズル(罠)が模っていた“呑”むの姿から、口と腕だけ取り出してくっつけたようなそれ。

 腕に対する攻撃は一切通らず、捕まえられたら口に放り込まれる。もちろん口を直接攻撃しても通った様子は無い。そして、そのモンスターのどこかに瘤が発生する。

 モンスター自体を倒すとその瘤も消えるのだが、元が魔法を主とした攻撃だ。解放されるとその場で爆発する為、それなりに危険である。モンスターを倒したら攻撃が暴発する、というのが割と早い段階で分かったから、出来るだけ口と腕に攻撃を当てない、かつ、瘤も避けてモンスターを倒す事が徹底されている。


「……ところで思ったんだけど」

「すげーヤな予感するけど、何?」

「これ、領域スキルが全部持ってかれてたらどうなってたんだろう」


 ただまぁ、現在此処にいる私達は領域スキルの維持が最優先だ。映像で見るだけなので、頑張れーと念を送る事しか出来ない。

 となると、自分のやっている事の話題になる訳で……何故か私に視線が集まったので、近くにいる司令部の人へ視線をパス。


「別動隊として動いている大神官さんからの要望で、空間的な座標の把握という事でしたから、恐らく、元の空間に戻る道が完全に途切れるかと」

「あ、うん」

「把握」

「大事な仕事だな」


 まぁそう言う事になるよな。でなきゃ、参照先である私に負荷をかけてまで観測を維持しないだろうし。

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