第2754話 73枚目:小休憩

 流石に砦1つ、それも頑健に作られ補強された大質量を崩し切るのはラスボスでも多少時間がかかるらしく、その間は休憩に当てられる事になった。主に踏ん張りスキルのクールタイムが危ない防衛組や、魔力ポーションで中毒が発症してしまった相殺組の。

 休む事は必要だ。私だって流石に消耗が大きいからご飯食べてるし。ちなみに食べ物も隠し部屋にあったらしいんだが、それがこう、よくある感じの粘土みたいな、性能と保存性だけは完璧な完全食だったらしく。具体的にはモソモソした無味でくしゃっとした紙を食べているようであり、こう、何かが削れるとの事。

 流石にそれは、とソフィーナさんを含めた【料理】系スキルを極めている召喚者プレイヤー数人が何とか食べられる料理にしようとしているらしく、私も残っていた調味料を提供したりした。


「まぁ、塩味がついてるだけでも違いますよね」


 もちろん私は持ち込んで残しておいたソフィーナさんの総菜パンだけどな。例の煮込み肉を使ったものだから回復量もかなりのものだ。大丈夫、私が継続回復量を上げたり回復したりすれば、【調律領域】の供給能力を開放したままな以上全員に恩恵があるから。

 というか、領域スキルと灯りの奇跡を維持している分を含めても、ご飯を食べた筈なのに各リソースが最大まで回復しないんだが。あの煮込み肉を使ったご飯だぞ? 満腹度はともかく、そもそもの回復量もすごいんだが?

 まぁ今ここにいる召喚者プレイヤーの人数考えたらそんなもんか……と、ダメ押しで特に魔力の回復力を上げるジュースを飲んだところで。


『全体連絡! 先行している前拠点が間もなく崩壊します! 戦闘準備をお願いします! 繰り返します、先行している前拠点が間もなく崩壊します――』


 拡声された指示が響いた。同時に何かしらでブレーキがかかったのか、今いる拠点で足場の動きが止まったようだ。まぁ私も見てたが、大きさ相応にもった方ではないだろうか。

 装備も比較的丁寧に修復して、クールタイムを何とか消化できた人から飛び出していく。どうやら今回はいくつか防衛設備も設置出来たようなので、もう少し持たせるのが楽になるだろう。

 ただ流石に防衛設備の素材は全部魔法で出すって訳にはいかない筈だから、その素材が尽きたら終わりの筈だ。まぁ死蔵するよりは少しでも使える時に使った方がいいって判断なのだろうが。


「まぁ、ここを凌がないと、次も何もありませんからねぇ……」


 初手しか実質効果は無いとはいえ、【並列詠唱】で可能な限りの魔法を待機させておく。今も前の拠点の瓦礫が飛んできてるから、それを撃ち落とすのにも手数が必要だし。

 もちろん大質量があちらからの攻撃の盾になっているという事は、こちらにとっては動きを隠すブラインドになっているという事でもある。ある程度は攻撃ペースで察する事も出来るが、それでも大技を待機させられていたりすると、相殺し損ねたら全滅があり得る。

 まぁ、まだ元気な攻撃組がちょっかいをかけ続けながら様子を見てくれているから、何かあれば警告を飛ばしてくれるだろうが。一応な。理性がほぼほぼトんでいるとはいえ、魔法に関しては本当ラスボスで納得しかないから。


――ドガァッ!!

「[マジックランス・ストーム]!」

「[チェイン・プロミネンス]!」

「[ロックアイス・ガトリング]!」

「[ミニ・ブラックホール]!」


 そして派手に破壊された前拠点と、その向こうから殺到する攻撃魔法の数々。もちろん即座にこちらからも攻撃が始まって、瓦礫は撃ち落とされて魔法は相殺される。それでもすり抜ける分は防衛組が防御するが……やっぱり完全に防ぎ切るのは無理か。

 ただどうやら、盾を目隠しととらえての大技は無かったようだ。思った以上に理性と思考が無くなっているのかもしれない。もちろん、攻撃組のちょっかい出しもあってこそなんだろうが。

 流石に攻撃の相殺と防衛組への回復をしながら目を凝らす余裕は無いし、そもそも魔法の応酬と相殺で実質視界は塞がれている。だから私がラスボスの状態を確認する事は出来ないが、そこはきっちり観測班が仕事をしてくれている筈だしな。

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