第2747話 73枚目:戦闘ジャンル
そして始まった対クズ戦。違った。対ラスボス戦。これは確かにレイドボス戦だったが、同時に、過去一番厄介で面倒な戦いとなった。
何せクズとはいえ頭が回る。思考する。魔族の王であるだけの実力がある上に、自分の事を良く知っている。なおかつ、特に魔法に関しては理解と対応が早い。
何より、言葉が通じるのだ。つまりこちらが迂闊に声を出して指示すれば、それを聞いて魔法の軌道を変えたりしてくる。突っ込んでくるなら罠を設置するし、大技を用意すれば良くて相殺、悪ければ先に撃破されかねない。
「面倒ですね、ギミック型だけならまだしも、
私なんかそっちはほぼやってきてないから、大人しく置物になっている。読み合いとか分からないんだよな。
ちなみにここにきて突然の対人戦だが、当然のようにギミック型でもある。具体的には周囲を囲む魔法陣。あれがどうやら、物理属性の魔法属性の組み合わせで正解の攻撃を入れないと壊れないようになっているらしい。
なおかつちゃんと頭が回る相手だから、壊されれば補充するし、次は壊されないように細工してくる。だからいちいち解読し直さないといけないし、そもそもそれらの魔法陣は盾として動き回っている。なおかつ、組み合わせが揃っているという事は無く、壊せる属性が無い魔法陣があったり被っている魔法陣があったりして、数も変動する。
「……そこを、さくさくバキバキ割っていけるように解析し続ける人達がすごいんですけど」
だからこそ、クズが防戦一方になっているのだろうが。しかし掲示板で魔法陣の特徴と通る属性の組み合わせを上げてくれているんだが、判断が早いし書き方が分かりやすい。
物理属性と魔法属性の組み合わせによって攻撃する人を変えるっていうのも、最前線まで来れる
それに、防戦一方でも耐えられているっていう時点で頭が回るのは全員分かっているし、そもそもこれはジャンルが対人戦だ。いかに相手の虚を突けるかが鍵となる。……まぁ私は分からないんだけど。
「……に、しても、不自然ですね。領域スキルの効果は魔法陣の内側ぐらいの距離に陽炎のようなものが見えていますから、異界の大神の力で対抗されているにしても……」
そういう事になっているので、正直私はクズの詳細を見れていない。見る事しか出来ないのだからそれぐらいでは役に立ちたいのだが、陽炎のようなものが挟まってる上に、魔法陣は魔視だと真っ黒だからな。
逆に言えば、魔法陣には異界の大神の力が無いって事なんだが、十分に馴染んだと言っていた筈だ。神の力には神の力でしか対抗できない。それなら、神の力を使って防御用の魔法陣を作ってしまえばいいだろう。それをしていない。
推定普段の生活に関するものだろう発想はアレだったが、魔族の王であり、実際異世界への干渉を成立させていた以上、少なくとも魔法に関してはステータス通りかそれ以上にちゃんと考えられる筈だ。だったら有効なのも分かり切っている筈なのだが。
「……馴染んだだけで神に至るにはまだかかる。すなわち、ここで神の力を消費してしまえば、神に成れない或いは暴走の危険がある?」
分かっていながらやっていない。という事はつまりやりたくないか出来ない。ではそういう方向になりそうな発想は、となると……たぶんこの辺りじゃないだろうか。目標達成が出来なくなる事は、ギリギリまで避けようとするだろうから。
で、そこまで考えておいてなんだが。……これ、正規ルートとしては暴走の気がするなぁ。神の力を扱いきれず、飲まれて暴走する。これが実質、ラスボスの第二形態とか第三形態とか、そういうのになってる気が、するなぁ……。
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