第2744話 73枚目:灯攻防戦
突然の揺れから始まった、灯りの奇跡を維持する耐久戦だが。私は奇跡を願う力場として、領域スキルを半径2mで球状に展開して、出力を全力で上げた。そこから消費量を微調節していないので、少しずつリソースは回復していっている。
もちろんクズはその領域スキルごと封じてこようとしている訳だが、その干渉は灯りの奇跡によって燃やされている。時々炎が揺れてクズが「あっちぃ!」と声を上げるからな。
ただ空間の隔離は上手くいっているらしく、魔力だけは回復するどころか段々減っていってるんだが……私は、領域スキルを、自分を中心に半径2mの「球状」に展開している訳で、な?
――ボッ
「おわっ!? なん何が、っげ、床!? 何で石が燃えるんだよ!?」
「真っ当な物質ではないか、神の敵認定されたあなたの力がしっかり染み込んでいたからでは?」
「だからなんで神の敵認定されてるんだよ! あり得ないだろ! 神になるまでもう秒読みだって言うのに! 異界とは言え大神だぞ!? 完全に馴染んでるのに!?」
だからダメなんだが、そこは理解できないんだろうなぁ。
まぁともあれ、見える範囲ばかりを対応していたクズは、私の足元に火が付いたのを見て慌て始めた。ちなみに私はちょっと熱いが、空気の足場を設置してその上に逃げたので大丈夫だ。体力(HP)の回復が止まったが、ダメージまでは入って無いし。
ここまで、私が全力で領域スキルを展開してしばらくするまで火がつかなかったって事は、何かしら対策はしてたんだろう。それが力場的除染をしたことになって弱まったか剥がれて、奇跡の炎で燃やせるようになったと。
そして一度ちゃんと火がついてしまえば、敵認定されている力では干渉するだけ燃やされる。つまり止める事は出来ないって訳だ。いくら対策していようが火勢が一定以上になった奇跡の炎は止められない。それこそ、私がいる場所を空間ごとくりぬいてどこかへ放り捨てる、ぐらいはしないと。
ゴ――――ガン!!!
そのタイミングで、再び大きな揺れが届いた。今度は多少物理的なものもあったのか、酒瓶や本が少し揺れる。もっとも私が感じた揺れ程ではないので、メインになっているのは空間的なもののようだが。
しかも今度は、部屋のあちこちに小さく罅が入った。正直炎で燃えていくのが見えた時点でそんな気がしたが、中身のあれこれはともかく部屋の構造物そのものは空間的なものだったらしい。
魔法陣が何重にも重なって炎を押しとどめようとしているようだが、それで止まるような格の神ではない。「敵を許さない」権能を持つ地母神系の神なんだ。それを直接あんなに罵倒しておいて、逃げられると思うのはあんまりにも舐めている。
「くそっ! せっかくの嫁候補なのに! 出会えると思ってなかった100点満点の嫁候補なのに! 絶対結婚したい!」
「願い下げですよお前みたいなクズ野郎」
「こんなに好条件の相手はいないだろうが!?」
「奪ったもので賄う時点で論外です」
「何でだよ! 奪えるのは力があるからで、強い奴の方が上なのは当たり前だろうが!? 強い奴の方が魅力的だろうが!?」
「お前の強さは魅力的じゃないですね。どちらかというと唾棄すべき使い方で在り方なので、嫌です」
「そこまで!?」
だから嫁候補って呼ぶな。ぞわっとする。
何てやっている間に、再び大きな揺れ。……あの辺の酒瓶落ちそうだな。ちょっとスキル確認、【念動】を入れて……お? これは普通のスキルだから通るのか? 通るな。よし。
ささっとその辺に並んでいた酒瓶と本を回収する。本は分からないが酒は絶対良いものだろうからな。後でティフォン様に捧げよう。何せこんなところのダメ元の願いであっても奇跡を顕現させてくれたんだから。
……しかしこの揺れ、誰が何をどうしてるんだろうか。ここまで大きく空間が揺れるって、この元凶が仕掛けた時ぐらいだと思うんだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます