第2740話 73枚目:準備仮了

 どうやら生物の立体パズル(罠)が詰め込まれた部屋を引ければ、1度で2百本ぐらいの灰色の鍵が手に入るらしい。罠だらけの部屋の場合は壁際にポーション何かが詰め込まれた棚があるし、「多数生物の立体パズル(罠)」の場合は輪っか付きの鍵がぐっと強化される。

 なおかつ鍵をコピーした場合、5分ほどしたら同じ部屋が復活するらしい。どこからどう見ても補給用だな。ちなみにオリジナルの鍵を鍵束から外して隠し部屋に入ると、ものすごい奥行きの部屋になるようだ。戻ってくるのが大変だし、鍵束にない鍵はコピーされないという事で非推奨になっている。

 という事で、鍵をコピーしながらあちこちの部屋を出入りして、灰色の鍵をメインに補給物資を集める事、1時間ほど。


「この鍵にも強化限界があったらしいです」

「……。多くないか?」

「2部屋で強化限界までいくみたいなんですよ。部屋に詰め込まれてる数が多いので」


 ポーション類はともかく、輪っか付きの鍵は強化限界があったようだ。1部屋全部解除してから範囲回復を連打していたら、途中で輪っか付きの鍵が落ちたからな。1つ拾ったら、他に落ちてたのが消えたけど。

 という訳で、普通の灰色の鍵の山と共にエルルに渡しておく。自力でモンスターが倒せる状態になるんならなる方がいいからな。それにステータスの関係で、竜族部隊の人達の方がインベントリの容量が大きい。灰色の鍵は大きさ相応に軽いんだが、それでも数千数万と数が増えればそれなりの重量になる。

 いやー、制御訓練だと思えば凄まじい効率だな。制御系のスキルの成長が止まらない。うっかりしないと笑ってしまいそうなほどだ。それこそ、「狂い崇める外法の禍壁」で壁のブロックを壊していた時以来じゃないか?


「もうちょっと時間があれば籠っていたかもしれません」

「そんなにか」

「失敗しても、出てくるのは普通のモンスターですしね。流石に部屋の中は狭いですけど」


 まぁだが、いつまでも経験値稼ぎもとい物資補給をしている訳にはいかない。とりあえず当面は大丈夫……じゃないかな、という数の鍵も確保できたし、そろそろ突入するとしよう。

 それにそうやって時間をかけている間に、検証班は更なる追加情報を得てくれていた。それによれば、相当数のモンスターがいるものの、リポップ時間は長いらしいんだ。つまり、1度一掃すれば、しばらくモンスターの数が減る。

 内部は迷路だし、他の場所からモンスターが集まってくるのは確か。なおかつ突入先はランダムでどこかの行き止まりらしいのだが、何度も突入している内に、モンスターの密度が下がって来たらしい。


「モンスターは倒さない方がいいのか?」

「いえ、倒してしまって構いません。その為の鍵ですし、部隊分けです。今度も絶対に広い範囲を探索する事になりますから、邪魔は少ない方がいいです」


 そこは大丈夫。とエルルに返答し、ついでにポーションの類も配る。持ってて損は無いからな。竜族部隊の人達が自分で使うには自然回復の方が上かもしれないが、周りに使う分には十分な性能があるし。

 それに手分けする必要があるって事で、私と一緒に突入するのはエルルのみだ。中は迷路だし、ちょっとでもマップは埋めた方がいい。というか、これでも戦力的には十分すぎるからな。

 まぁ突入したところで、行き止まりに灰色の鍵を使えば戻ってこれるんだから、だいぶ気は楽だ。今も出入りしている人がいるので、流石にここが塞がれるって事は無いだろうし。


「では突入します」

「……本当に俺だけでいいのか」

「どっちみち中で合流できますからね。1度の突入で本体に辿り着けるとも思えませんし、戻ろうと思えば戻れるのは見ての通りです」


 というか、合流できないと困る通り越しておかしいんだけどな。だって一応はレイド戦でラスボス戦なんだから。ここまで散々、それはもういい加減にしろってほどギミックだらけだけど、とりあえず人形は大部屋で戦闘って形だったし。

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