第2739話 73枚目:扉の向こう

 検証班の人が、大部屋中央の床に近い場所で灰色の鍵を取り出したところ、姿が消えてしまった。扉が出てくると思ったからちょっと驚いた。

 ただそこからすぐ戻って来たので、戻れない訳では無いようだ。ただし、その向こうはここまでと同じく城の廊下風の通路だったものの、相当数のモンスターが存在していたらしい。

 なおかつそのモンスターと戦う場合、灰色の鍵を消費するようだ。正しくは、輪っか付きの鍵によってモンスターに灰色の鍵が自動使用されたとの事。つまり灰色の鍵が無い場合、攻撃が一切通らない可能性がある。


「戻る場合も行き止まりに灰色の鍵を使用する必要があり、必須物資となっているのは間違いないようです」


 ……確かに、いくらあっても足りない感じの手に入り方だなぁとは思ったけども。大量に鍵が手に入る隠し部屋が見つかって、走り回らなくても一気にたくさん手に入れられるようになったけども。

 検証班の人が相当数のモンスターがいるって言った以上、たぶん戦闘無しには移動もできないぐらいの密度だったんだろう。そして通路といったが恐らく迷路だろうし、たぶんその先にも何かギミックがある。

 で、そのギミックを解くのに灰色の鍵を使わない訳がないだろうし、そもそもこっちに戻ってこれるって時点で補給が必須って事だろう。主に灰色の鍵の。その時点で、どれだけ必要になるのか頭が痛い。


「どうやらモンスター1体につき鍵は1本で良いようですね」

「なおかつ所有する鍵の本数が多い人から優先的に使われるようです」

「残りが1本の場合モンスターに対する自動使用は止まるのも確定しました」


 で、私が自分の持っている灰色の鍵の本数を数えている間に、検証班の人達は他の細かい条件を確定させていた。仕事が早いんだよなぁ。しかし随分と親切な条件だ。異界の大神の方が気遣いレベルは上らしい。比較対象はこっちの大神(運営)。

 さて流石にほぼ一番最初にこっちへ来ただけあったか、灰色の鍵はなんと4桁に届いていた。これならしばらくは大丈夫だろうか。流石に私も1人で突入する訳じゃないし。

 ……いや、もうちょっと持ってた方がいいだろうか。竜族部隊含めたうちの子が倒す数を考えると、脱出用は1人ずつ持っててもらうとしても4桁に乗った所程度だとあっという間だ。


「……。エルル」

「何だ」

「素朴な疑問なのですが、部隊の中にこれを持ってる人って何人います?」

「…………」


 これ、と輪っか付きの鍵を示したが、視線を逸らされてしまった。あー、やっぱりか。たぶんルチルは持ってるだろうけど、ルドルは厳しそうだな。たぶんルシルはやらないだろうし、ルディルは……どうだろう。出来なくは無いと思うんだが。

 ルージュは持ってそうだが双子は微妙だな。ルイシャンとルウは言わずもがな、ミラちゃんもこういう細かいのは難しい。うん。やっぱりもうちょっと灰色の鍵を集めておいた方が良さそうだ。

 ここで残り時間確認、残り時間は加速状態で23時間。この大部屋にいた本体っぽい人形とは1時間ぐらい戦っていたようだ。1時間もかかったというべきか、1時間で済んだというべきか。


「1時間で済んだ、というべきでしょうね。実質別動隊が異界の大神の力、その源を回収する為のギミック解除の時間ですし。とりあえずエルル」

「……解除は無理だぞ?」

「知ってます。この先は再び廊下風の通路で恐らく迷路になっています。その中での戦闘ですから、閉所戦闘の為に隊を分けて下さい。その上で、必ず鍵を持っている召喚者プレイヤーと一緒に行動するように通達を」

「分かった」


 細かい事が苦手な竜族が、罠の解除なんていう細かい事の極みみたいな事が出来る訳ないのは知っている。あくまで私が特例なんだ。何せ生産スキルのレベルが非常に高い皇女だからな。

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