第2738話 73枚目:隠された扉

『ちょっと!? エルルリージェ、これ発案したの姫さん!?』


 何故バレた。

 というのはともかく、司令部が大部屋にいる召喚者プレイヤー全員(「第二候補」も含め)にウィスパーで作戦を伝え、そこからタイミングを見計らってエルルが投げ槍を投擲。見事に命中して爆散させる事に成功した。

 「第二候補」に作戦を伝えてそういう前提で動いてもらい、それをサーニャに動きで察してもらう形になったが、どうやら無事……無事? 一応「何か大きな一撃が入る」ぐらいは伝わったようだ。

 まぁその直後の第一声がそれだったのはともかく。私は大部屋に入らず、少し離れたところで中継動画越しに様子を見ている訳だが、どうやら倒す事自体は正解だったらしい。


「装備品の類は全部爆発で壊れたようですが、あの鍵束に関しては、倒されたから出現した、という形になるんでしょうし」


 まぁあの水晶玉のようなものを壊してもなお名前が分からなかったって時点で、人形じゃないかと疑うべきだったんだろう。実に手が込んでいる。

 で、その鍵束、「多数生物の立体パズル(罠)」をこちらで解除した時に出てくるものと似たような、輪っかにいくつもの鍵が下がっている形の鍵束は、幸いというべきか、その輪っかから鍵を外す事が出来るようだ。

 なおその後色々試してみたところ、輪っか付きの鍵を近づけるとどれか1つが外れて移ってくるらしいことが分かった。……その方法だと、いくつ鍵を外しても、鍵束に下がっている鍵の数が減らないっていう事も。


「……。順番にクリアしていくべき、という気配もしますが」

「もしくは、それぞれの隠し部屋で必要な適性がある、という事かしら~」


 ちなみに隠し部屋への入口自体は、元となる鍵束を持った人曰く、大部屋の壁にずらっと扉が並んでいたらしい。やっぱりそこにあったか。しかも壁にならぶ扉は1段ではなく、天井まで壁全体を埋めるように並んでいたとの事。

 例によって人数が必要で、手分けをして探索するしかないだろう。ただ既にいくつかの部屋は突入者がいるし、戻ってくる事も出来ていた。そして中は罠だらけの事もあるし、「多数生物の立体パズル(罠)」や生物の種類が少ない立体パズル(罠)が並んでいる事もある、という報告が掲示板に上がっている。

 立体パズル(罠)が並んでいる場合は、その全てを解除したら扉自体が消えたし鍵も消えたとの事で、そうやって1つずつ潰していくのが正攻法なのだろう。後は時間が足りるかどうかだな。


「…………」


 まぁそうやって人が動き出したので、私も大部屋に戻って鍵束に自分で持ってる輪っか付きの鍵を近づけた。カチャン、と小さい音と共に鍵が1つ増えて、くるっと見回すと左手側の壁に扉が見えたから、あそこにいけばいいんだろう。

 が。


「司令部ー」

「はい」

「これ、見て下さい」


 なるほど、と足を一歩動かしたところで、気付いたんだよな。元々下がっていた灰色の鍵が、自然にぶら下がっているんじゃなくて、真下を指してるって事に。それが気のせいじゃないのは、司令部の人を呼んでから、輪っか付きの鍵の輪っか部分をあちこちに向けて確定した。

 どう見ても大部屋の床の真ん中を指し示している。それが司令部の人にも伝わったところで、即座に検証班が集まって来た。もちろん輪っか付きの鍵は他の人も持っているので確認してもらったところ、誰が持ってる鍵でもそうなる事が確定。

 この大部屋で他に鍵が動いた事はありますか、と聞かれたので、ルシルに動いてもらった一件を話す。そうなんだよな。反応するという前例はちゃんとあるんだ。魔族の力で塗り潰された大部屋でも。


「……この床と鍵束から認識した者へ、若干の認識阻害が働いていますね」


 しかし誰も気付かなかったのかと思ったら、そういう事らしい。本当に面倒だな。

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