第2737話 73枚目:探索場所

 大部屋で水晶玉のようなものが割れた時のダメージは大体回復できたので、戦闘の様子は気になるが私は探索に回る事になる。

 とはいえ司令部の人曰く、ここまで散々探索してきた迷路部分は、異界の大神の力を利用した回路が停止した段階で既に端から崩壊を始めている為、除外していいらしい。時間制限でもある崩壊だが、イベント期間終了までは持ちそうだとの事。

 そして別動隊が向かった回路の大元にも恐らくいない。何故ならそこにいる場合、別動隊が無事で済んでないからだ。それが無事なので、違う場所にいる可能性が高い。


「となると、大部屋とその周辺しか残らない訳ですが」

「周辺に不自然な空間はありませんが、空間そのものが隠されている可能性は否めませんね」

「そういえば~、もう鍵は見つからなくなったの~?」

「隠し通路及び罠の設置はあの回路で行われていましたが、生成ではなく転移だという事が判明した為、回路の解析を行う事で転移元の座標を確認しています」


 まぁ大体司令部なら思いつく事はやっているだろう。大部屋の中が、回路部分以外は真っ黒=魔族の力で塗り潰されてるっていうのは伝えたし。正直私も大部屋の中に扉というか入口が隠されてるだろうと思ってるし。

 問題はそれをどうやって見つけるかだ。まだ灰色の鍵も数があるし輪っか付きの鍵も持っているが、生成ではなく転移だったなら、回路が停止した以上は「多数生物の立体パズル(罠)」も出現しないんだろうし。

 ……。本体がしっかり異界の大神の力を取り込んでいるなら、やっぱり輪っか付きの鍵が反応しそうな気がするんだけどな。もしかして輪っか付きの鍵の数というか、レベルが足りない感じだろうか。


「天井と床には何も無い感じですか?」

「回路のあった部分の裏までは回れますが、その先は破壊不可能です」

「つまり進めないって事ね~。それなら、天井裏や床下は考えなくていいかしら~」

「構造的な隠し方ではない可能性が高いです」


 となると、やっぱり入口はあの大部屋の中にありそうな気がするな。……あのほぼ本体じゃないの? って人形と戦いながら探索しなきゃいけないのか。難易度が高いが?

 なお現在「第二候補」とサーニャの2人がかりで戦っている人形は、行動阻害系の罠や状態異常が効かないらしい。正しくは装備の効果ですぐに解除されるんだそうだ。残った灰色のアクセサリのどれかの効果じゃないかと言われている。

 ただどこかに盗み避けの装備があって、それが壊れれば灰色のアクセサリもすり取って無力化出来る筈、という仮説が立てられ、そちらの腕を磨いた召喚者プレイヤーが虎視眈々とチャンスを狙っているらしい。


「なるほど。それで私は余計に大部屋に入らない方がいいと」

「種族特性だけでもダメだものね~」


 そういうスキルとかアビリティ、大体は鍛えていった先で悪属性が必要になるからなぁ。分からないではないんだけど、悪属性だと問答無用でデバフがかかる種族特性の私とは相性が悪い。

 しかし救護班としての仕事も大体終わったし、追加の怪我人はほぼいない。それならいっそ別動隊に合流するとかした方がいいんじゃないかと思うんだが。


「その辺どうなんですか司令部」

「現状、少なくとも回路の解析が終わるまでは、方針が決められない状態です」

「つまりもうちょっと待機って事ね~」


 そういう事らしい。と言ってもインベントリの確認ぐらいしかやる事が無いんだよな。特に変わったドロップアイテムも入ってないというか、そもそもモンスターとの戦闘があの、通路と同じサイズの槍を持ったやつだけだし。他はノーミスだったから。

 ……その槍の奴の素材から作った爆裂投げ槍がまだ残ってるな。ふむ。


「エルル」

「何だ」

「これ、今動いてる人形に当たられます?」

「…………それは当てていい奴なのか?」

「人形ならいいかなと。大部屋の壁に当てるのも考えましたが、空間的な隠し扉や隠し部屋だと通りそうにないですし」

「こちらにもまだ残っている分がありますので、内部に伝達します」


 早く倒せるなら倒すに越した事はないよな。ついでに危険物が使い切れればなおいいし。

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