第2730話 73枚目:水面下進行

 そこから数分して、別動隊が回路に流れている分の、異界の大神の力の源があるらしい空間を見つけたらしい。仕事が早いな。

 ただ部屋ではなく空間という表記だったし、見つけただけで干渉出来たとは書いてなかったので、当然ながらややこしい状態になっていたのだろう。

 魔視でみる限り、足元の板のチャージもそれなりに進んでいる。どこがマックスなのかは分からないが、半分は越えてそうな気がするんだよな。つまり、そろそろ大技が来てもおかしくないかもしれない。


「……?」


 とりあえずこっそり全員に防御バフを配っていると、ふと何かが動いた気がして視線を落とした。そこには、ベルトに下げられた輪っか付きの鍵がある。この大部屋に入ってからはどこも指し示さず揺れていたのが、今になって不自然にその先をどこかへ向けた。

 どこに向いてるんだ? とその先を視線だけで辿りつつ、魔視の強度を上げてみる。この大部屋、真っ黒い地に灰色の回路を描いたように見えるから視認性が最悪なんだが、この鍵が指し示すのなら魔視の方が分かりやすいんだよな。

 やや上、左側。私は大部屋に入ってから、入口から見て左手側に移動したから、部屋の奥側の天井辺りを指し示しているようだ。突入時点では何も無かったと思うんだが。


「……ルシル」

「ん」

「これ、あの辺にお願いします。見つからない事最優先に」

「ん」


 そしたら、こう、何というのか……水が出ているホースの先に重い物を乗せたりすると、ホースが膨らむだろう? もちろん次の瞬間には破裂するんだけど。そんな感じに、回路を流れている灰色(力)が変化していて、な。

 これは放っておいたらヤバいやつ、と判断して、ルシルを呼んで輪っかの付いた鍵と、灰色の鍵を渡した。同時に掲示板に書き込み、その周辺の召喚者プレイヤーに警戒を促す。エルルじゃないのは、万が一にも見つかるとまずいからだ。相手の警戒度って意味で。

 ラスボスの魔法が炸裂した、と思わせる為のエフェクトが激しくなってその方向の動きを隠す。その間に無事ルシルは、効果範囲がそれなりに広がった輪っか付きの鍵と、自動使用される用の灰色の鍵を持って、そのヤバそうなところに近寄れたらしい。


「ひょっ」

「あっ」

「わー根性……」


 そしたら、こう、その場所がぱかっと開くようにして……恐らく「多数生物の立体パズル(罠)」が出てきた。もちろん天井付近だったから、重量物であるそれは落下するんだが、周囲で備えていた召喚者プレイヤーがどうにか受け止めたらしい。落下音は聞こえなかった。

 というかたぶん何人か自分から下敷きになりにいったんじゃないだろうか。大丈夫? 生きてる?


「……「多種生物の立体パズル」の安置成功、罠は無し、重傷者が出たものの死に戻りは無し。解除にかかる、との事です」

「おぉ……」

「セーフ」

「あぶねぇ」


 生きてたみたいだ。ヨシ!

 その報告の直後に別動隊から、干渉成功の報告が上がった。まぁそんな気はしたけど。力の流れに干渉するんだから、そりゃ多少は詰まったりするだろう。

 ただこちらの報告も見たらしく、このままじわじわ力そのものを別動隊の方に引っ張って、立体パズルの形に変えて回路から切り離せるようにする、という書き込みがあった。それで頼む。一応こっち戦闘中だし。


「ただいま」

「お帰りなさいルシル。良い仕事でした」


 戻って来たルシルから輪っか付きの鍵を返してもらい、周りに隠れつつ頭を撫でる。【人化】するとさらさらなんだよな。これも良い。

 しかし本当にギミックボスって面倒だな。しかも学習するから、手札を隠しながらギミックを解除しなきゃいけない。本当に大変だ。……ルディルに、記憶を消す毒とか無いか聞いとくんだったかな。

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