第2728話 73枚目:到達

 流石に兵器的に恐ろしすぎる武器が出来てしまったが、そんなものを作ったかいはあったというべきか。通路の壁を剥がし、その奥にある回路を寸断、あるいは細工して、中央への道を作る作戦は順調に進んだ。

 まぁここまでやったんだから進んでくれなきゃ困るんだが。とはいえどうやら回路の寸断が間に合わなかった一部ではマップリセットが発生したらしい。のだが、きっちりその時に立体パズル(罠)を失敗してあの巨大な槍持ちを呼び出して倒して素材を補充していた辺りが司令部だな。

 で、私がこちらに来てから7時間後。恐らく中央と思われる、これでもかと複雑な鍵がかかっている大きな扉が発見された。


「あれではないようです」

「えっ」

「マジか」

「ラスボスぅ……」


 ……なお、本当の入口はそこから分かれ道を1つ戻った先の行き止まりだったようだ。いやだって、ラスボスなんだからあんな大きくて複雑な鍵のかかった扉があったらそっちだと思うじゃん。それが丸ごと罠でしかないとかさぁ。

 まぁあの、最初の部屋と同じ形の部屋で扉が罠だった、という所で学習した司令部には通じなかったんだが。あぁなるほど、あそこで警戒が一段上がってたんだな。

 当然のようにこちらにもこれでもかと罠が仕掛けられていたらしいし、ここで一旦仮眠を含む休憩だ。たぶん流石にラスボス戦だと思うから。たぶん。恐らく。流石に時間無いし。


「今回の休憩は交代じゃないのか」

「こちらが呼び出さない限りモンスターは出てきませんし、次はようやく全ての元凶との戦闘ですからね」

「……なるほど」


 それでも一応、少しずつタイミングをずらして、5時間ほど。これが最後の休憩だな。

 加速状態で残り1日。丸ごと戦い続けるのはちょっときついが、これ以上時間は使えない。通常空間に戻るのはもっとダメだ。何せリアル20分、通常空間だと1時間半を切ってる。

 散々倒した人形より絶対にステータスは高いんだし、そもそも頭の作りが違うだろう。そんな相手を1時間ちょいは、無理だ。


「それでは、開きます!」


 出来る限りの準備をした状態で、中央の部屋に通じる扉が開く。シュイン、とちょっと毛色が異なる音と共に壁に見えた扉が左右に割れて、その奥が見えた。

 即座に召喚者プレイヤー達がなだれ込む。私もその流れに乗って動きながらざっと見た感じ、人形の時と同じ大部屋ぐらいの広さはありそうだ。

 ただしこちらには天井、壁、床の全てに何か強い力が回路を形成している。魔視の強度を上げるとすぐ分かるが、魔視が無くてもそこに力があるのは分かるだろう。


「……騒々しい」


 なおその中央には、水晶玉のようなものが設置してあった。巨大なそれの中には目を閉じた状態の人形と同じ姿が立っていたのだが、盛大な舌打ちと共にそう呟くと、その目が開かれる。

 右目は灰色、左目は真紅。当人の色彩は人形と同じで、違いは、アクセサリやローブの刺繍の一部にも灰色が混ざってるって事だろうか。杖も、先端の大きなブラックオパールを縁取るような形で灰色の輪が追加されていた。

 ベルトに並べられた杖の方に色彩の変化は無いが、本数が増えている。10本はあるだろうか。よく並べたな。私のベルトも色々工夫してるが、それでもあそこまでは並ばないぞ。


「真なる魔族への進化は成功。そこから神の欠片を得て、この身を神の領域に昇華する事が出来るまで、あと少しだというのに。こちらに軸足を置くもっとも近い神の誕生まで、いくらもないというのに」


 うんざり、という調子で吐かれた言葉の〆と、召喚者プレイヤー勢の最後の1人が大部屋に入るのが同時だっただろうか。


「たった今少しが、何故待てん。これだから下等種族は。貴様ら程度でも、この手で払えば汚れが付くだろうが」


 ……まぁ、容赦する気は最初から無かったが。

 まーいっそ清々しいぐらいで良かったよ。万が一にも躊躇わなくていいから。

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