第2726話 73枚目:重要情報

 比較的幸いだったのは、それが本当に大物だったから立てる音も相当だった事と、やっぱり一応は人口密度が上がっていた事だろう。


「は!? え、なんこれ!?」

「おいなんかすげー音が、いやすげーのある!?」

「ちぃ姫のキレ声が聞こえたのはここね!?」


 最後に関してはどういう判別、いやいい分かった。可愛い好き召喚者プレイヤーだ。時々本当に訳の分からない理由と方法でこっちの居場所をピンポイントで当ててくるから考えるだけ無駄。可愛いに対する情熱すごい。以上だ。

 私から見た限りだと、見るからに機構で兵器だったんだが、音を聞きつけてやってきた召喚者プレイヤーによれば、一応モンスターだったらしい。後ろから殴れば割とあっさり倒せたとの事。

 【解体】を持っている召喚者プレイヤーだったらしく、私も巨大な槍部分を乗り越えて、その生物部分もしくは本体部分を見に行った。


「……一応、形的には大盾と槍で武装したって事になるんでしょうか」

「それっぽいな?」

「デカさがおかしいだけで」

「だけじゃないと思うの」


 それはそう。そもそもの大きさがおかしい。まぁそれ以外にもおかしいところがあるというか、むしろおかしいところしかないんだが。

 素早く司令部まで情報が回っていたらしく、検証班が来てくれたので正直にこいつが出現した時の状況を説明する。たぶんというか間違いなく、出現条件そのものはマップリセットが発生する瞬間に立体パズル(罠)を失敗する事だ。

 その攻撃力とかこの槍を含めた素材とかも十分気になるんだが、それ以上に問題なのは、こいつ自身というより。


「ちなみにちぃ姫さん。あの向こうってどう見えています?」

「通常視界だと何かの配線。魔視だと真っ黒に塗り潰された中に灰色の線が走っているようにみえますね」

「つまりおおよそゲートのあった部屋と同じ構造という事で宜しいですか?」

「たぶん一緒でいいと思います」


 その、壊れた壁の向こうにあったものだ。まさかここでもしっかり異界の大神の力を活用してたとはな。いつまで経っても中心が見つからない筈だ。

 というか、だから異界の大神の力の欠片が鍵の形をしてたのか? 鍵を持った状態でないと見つからない扉のように、行くべき場所が隠されているから。


「難易度が高いのでは?」

「不思議な事に運営より親切に感じる」

「同感だけど感覚麻痺してんなぁ」

「辛うじてノーヒントとは言えない……?」


 そうだな。ノーヒントどころか使わせる気の無かったあのイベントページの細工は酷かったな。確かにあれに比べれば分かりやすいか。

 だがまぁ、一部とはいえ配線が見えているのなら、検証班がそこから得られる情報の量は膨大だ。どうやら私達召喚者プレイヤーだけでなく、『勇者』であってもこの通路を破壊する事は出来ないらしいが、破壊できる相手の呼び出し方はもう分かった。

 後は、その破壊できる相手を呼び出しても生き残れるかどうかなんだが……。


「踏ん張りで耐えて即逃げ」

「丸太デコイで躱して背後を取る」

「カウンター魔法準備しておけばいけそう」

「受け流しても壁が破壊できている事から、反射しても効果はありそうですね」


 まぁ、最前線まで来れるんなら、その辺りの手札は持ってるか。そうか。そうだな。食らったら終わりの攻撃とか、レイドボスなら標準装備だもんな。

 という事で素早くその情報が共有された結果、次の空間的な揺れの時にはあちこちで轟音が響く事になった。どうやら空間的な揺れで出てくる奴は、巨大パイルバンカーもとい通路幅いっぱいの槍を持った重歩兵みたいな何かで固定のようだ。

 なお後で検証班が例の城から見つかった資料を探し直してみたところ、どうやらあれは自立する防衛機構の一種だったのではないか、という結論に至ったらしい。……資料によれば、あの槍を突き出すだけではなく、上空に発射する機構も構想されてたんだってさ。つまり、対竜族兵装。ほんとに食らわなくて良かった。

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