第2724話 73枚目:段階攻略

 さて何か思ってなかった方向で罠の無害化が出来たが、それ自体は良い事なのでいいとして。手順はともかく完成形は一緒だったらしい「多数生物の立体パズル(罠)」を解除して回復したら、そこには、輪に通された鍵が残った。

 色は灰色。他の立体パズル(罠)から出たものより一回り大きい鍵は、どうやら鍵を使うべき場所を指し示してくれるものらしかった。何しろ輪っかの部分を持って持ち上げたら、明らかに不自然な形で、鍵が変な方向を向いたから。

 その方向に向かって迷路を進んで行ったら魔視視点だと黒く塗り潰された壁があり、今度は窓が出たので間違いない。なおそこにいたのは可愛い好きの召喚者プレイヤーだったので、窓から顔を覗かせた私を見て一度ぶっ倒れている。


「では頑張ってくださいねー」

「はいっ! 粉骨砕身して攻略します!」

「砕かず生きて下さい」

「はいっ! 死に戻りは迷惑がかかるステージですし!」


 そうじゃない。

 と言っても強火の可愛い好き召喚者プレイヤーがいまいち聞いてくれないのはいつもの事なので、私もいい加減慣れてしまった。たぶん深く考えない方が精神衛生上良い気がする。だからこれ以上考えない。

 そんな出会いもあったがともかく。輪っか付きの鍵を手に入れると探索効率が跳ね上がるらしく、こちらへ移動してくる召喚者プレイヤーは加速度的に増えているらしい。

 また輪っか付きの鍵を持った状態で「多数生物の立体パズル(罠)」を解除すると探知範囲が広がる上に、仕掛けのある壁に近づくだけで自動的に灰色の鍵を使ってくれるようになるそうだ。


「なるほど。自動的に鍵を開けてくれるのは助かりますね」


 どうやらまだこっちに来ていない召喚者プレイヤーにもだいぶ話が伝わっているらしく、窓が出たらすぐにランプを調べる召喚者プレイヤーも出ているらしい。そういう話が伝わってくる程度には掲示板も賑やかになって来た。

 そうやって人数が増えて、恐らく一定人数に達するたびに空間的な揺れが来るんだが、これはもう慣れた。そのたびにオートマップがリセットされるのはどうかと思うが、立体パズル(罠)を求めてひたすら移動するよりは再配置してもらった方がいい。

 それにカバーさんがこっちに来たらしく、途中からオートマップが共有されて広がっていくようになったからな。やっぱり他の人が動いているのが見えると、精神的に楽だ。


「……とはいえ、まだ中央は見つからないようですが」


 まぁでもそれはそれとして、中央と端は見つかっていないようだ。困った事に。結構な人数が動いてそのマップを共有して統合して、それを参考に現場の召喚者プレイヤーが動いているんだから、相当に効率よくマップは埋まっている筈なのに。

 もちろん私も積極的にマップが埋まっていない方向に進路を取っているし、マップが全体的にギザギザしてるって事は、同じことを考えて手分けしている形になっているって事だろう。

 途中から司令部の全体指示で、マップがリセットされたら初期地点にメモを残してください、というのが回って来たから、司令部も色々試しているんだろうが……まだ人数という名のフラグが不足しているのかもしれない。


「他に増えた情報は……おっと」


 ざっと色々確認してみると、どうやらあの脱出用の窓。あれは強度がそこそこあるから、攻撃力が無いとちょっと突破が難しいらしい。もちろん最前線まで来ている以上最低限の戦闘力っていうのは持っているが、ちょっとここまでで消耗しすぎたりして壊すのに時間がかかる人がいるようだ。

 そして窓は鍵を使った人が離れると消えるらしく、その場合は人形と戦うエリアに戻されるとの事。なので鍵を使ったらその場を離れてはいけないらしいんだが、どうやらあの窓、こっちから壊す事も出来るらしい。

 もちろん中から壊すより外から壊す方が難易度は高いし、砕けた窓の破片に当たるとダメージが入るらしいんだが、その場を離れるぐらいならベッド辺りに避けてもらって窓を壊した方がいいらしい。


「まぁ強度が高くなったと言っても、前線アタッカーや魔法火力担当ぐらいなら余裕で壊せるでしょうからね」


 むしろ余波を防ぐ方が大変そうだ。もちろん、そこまで火力があるならちゃんと制御できるだろうけど。

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