第2723話 73枚目:次の段階

 まぁ色々可能性は思いついたが、たぶん、必要フラグはこっちに来た人数だったんだろう。


――――ゴン!!!

「おわっ!?」


 それでもまぁ窓から出て、加速状態で1時間ぐらいか。そんなにパターン数が無い立体パズル(罠)の解除も1つ1分ぐらいになり、あまりに真っ直ぐなオートマップを見て、そろそろ探索する方向を変えるべきか? と思ったところで、強い揺れが来た。

 私は空気の足場に乗って鍵を回収したところだったから地面には触れていないんだが、空間的な揺れなら関係ない。そしてこの場でこんなに大きな揺れが起こるのは、ほぼ間違いなく空間由来の理由だ。

 だからそれはまぁいいんだが、問題は。


「うわ、これはまた……」


 今の揺れで、前後左右全ての通路が組み代わったらしい。オートマップもリセットされているので、現在位置が全く分からない状態に後戻りだ。いやまぁ元々どこにいるのかはよく分からない状態だったけど。

 これならある程度地図が出来上がったところでスクリーンショットを撮っておくんだったか。と思いながら、右と後ろ、そして正面の3択になった通路を見回す。特に違いのようなものは見えない。

 のだが……T字路の正面に当たる、左側。そこが魔視でみると、真っ黒に塗り潰されている。ここまでの事を考えると、灰色の鍵を使う場所だろう。という事で取り出して近づける。吸い込まれる。カチャッと鍵の開く音。


「……だいぶ発見難易度が高いですね」


 だがそこから出てきたのは、窓では無くて「多数生物の立体パズル(罠)」だった。行き止まりの通路が出てきて、その奥に鎮座している。その間は罠でびっしりだ。まぁそうだろうけど。

 ただ、その中にこう、魔視でみたら色が隠し扉だった部分に繋がってる罠があるのは、これはヤバいんじゃないだろうか。具体的には閉じ込められそう。避けようと思えば避けられそうだが……何か動いてるんだよなぁ。

 出てきた隠し通路の奥行は2mぐらい。ただ「多数生物の立体パズル(罠)」は解除する為に、その後ろを確認しないといけない手順があるから、この距離から解除を試みるのは危険だ。


「とはいえ……何か割と自由に動く感じですし」


 ただ、どうも閉じ込められそうな罠も、通路の中を割と自由に移動している。自由にというか無軌道にというか、ふらふらうろうろというか。しかも床に張り付いているだけではなく、壁や天井に移動したり、細長く伸びてみたり。猫みたいな挙動だな。

 猫なら大人しく昼寝していてくれないものか、と、その罠が手前に来たところで眠り薬入りの液状おやつを差し出してみる。とはいえ、罠は罠だからこんなもんに引っかかる訳がない。


「は?」


 ……何か食われたんだけど。

 そして壁近くの隅によって動かなくなったんだけど。

 しかもその上に30分のカウントダウンが表示されたんだけど。


「えぇー……?」


 ……魔法生物系の罠だったのか? という発想に至ったのは、「古代の人工使い魔」の事を思い出したからだ。うちの島でも畑仕事や農具の整備で働いてくれている、棒人間のような使い魔。

 あれの説明には「一部地域」としか書いてなかったが、たぶん主は魔族だろう。時代も古代となっていたが、現代基準だったから合致する。筈だ。まさか普通に普通のおやつを食べるとは……いやそう言えばうちにいる人工使い魔も普通に普通のご飯食べてたな。なら食べるか。

 ……とりあえず掲示板に書き込んでおこうか。こんな場所にまで液状おやつを持ち込んでる召喚者プレイヤーはいないだろ、と言われるかもしれないが、実は割といる事を知っている。主に可愛い好き召喚者プレイヤー達がな。


「最前線の癒しと言って、うちの子にもご飯を貢ごうとしてましたしね……」


 その辺うちの子はちゃんと自制できるから大丈夫だが、自制できないとふくふく一直線になりかねないぐらいに、可愛い好きはチャンスを逃さないようにしてるんだ。素直にすごいと思う。

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