第2722話 73枚目:回収続行

 そこからしばらく進むと、また真っ黒に塗り潰された壁(魔視視界)を見つけたので、灰色の鍵を取り出した。ひゅっと壁に吸い込まれてカチャッと音がする。

 また窓が出てきたので覗き込むと、そこにいたのは残念ながら見知らぬ召喚者プレイヤーだった。いや見た事はあるな。どこだったっけ……あ、たぶん司令部だ。司令部に顔を出した時に見た気がするんだ。たぶん。恐らく。

 司令部なら大丈夫だろうって事で、声をかけてこちらで何があったかを説明する。と……何故か頭を抱えてしまった。あれ?


「……先行して「異界の大神の小さな像」を持って、次に進んだ組なもので」

「あー……」

「いえ、でも他にも数名いますから、少しでも共有しておきます」

「お願いします」


 なかなか上手くいかないもんだ。が、流石司令部所属の人だけあって切り替えが早い。ちゃんとランプから灰色の鍵を取り出して、念の為自分宛てにメールを書いてから扉から出て行った。すっと窓が消えて、今度こそただの壁に戻る。なるほど、ここが固定で窓が出てくる場所って訳じゃないのか。

 しかし灰色の鍵を持っても元の……「異界の大神の像」の説明文によれば、エリアか。エリアには戻れるんだな。あの鍵の効果についても聞いておきたい。窓を壊しても扉からエリアに戻れるんなら、鍵だけを受け渡して持って帰ってもらうって事も出来るかも知れないし。

 まぁそれで何が出来るかにもよるんだけど。鍵を持っていたら窓から出られるようになるか、もしくは「異界の大神の小さな像」と同じ効果になるとか辺りだろうか。


「ますます必要な数が多いやつですね。やはり手数を増やさないとどうにもならないやつでは」


 その手数を増やす為には情報を持って帰ってもらわないといけないんだよな。1人1人増やしてもいいが、正直効率は良くない。話を広めて、自力で窓から脱出してもらう方が絶対に早い。

 で、広めてもらうにはせっせと走るしかない訳だ。罠を解除しながら。まぁ私は魔視でみればいいだけだから、きっとまだマシなんだろう。探知系のスキルを使いながらとかだともっと大変だし。

 そんな調子で走り続ける事しばらく、どうやら罠もそうだが、魔視でみると真っ黒に塗り潰された壁も一定間隔で配置されてるらしいことが分かって来た。立体パズル(罠)と壁の位置をマップにメモしておいて良かった。


「となるとたぶんこの辺に……あった」


 予測がつくようになれば発見もしやすくなるし、気を抜く事も出来る。どこに出てくるか分からないからずーっと気を張り続けてるっていうの、地味にきいてくるんだよな。スタミナの回復力が高くても、気疲れはどうにもならない。

 どうやら話そのものはそれなりに広まっているらしく、その情報を聞いてから転移した召喚者プレイヤーもそれなりにいるらしいという話を聞けた。良い兆候だ。その調子で人数が増えてくれればきっと地図も一気に埋まる。

 中にはそのまま窓から出てきてくれる人もいるので、人数を増やすという方向の進捗は順調だ。


「ところで、結局ここはどのあたりになるんでしょう」


 なお、現在位置という意味では全く進捗が無い。既にこっちに来てる筈の召喚者プレイヤーとすれ違う事すらない。私が一定方向に進んでるからっていうのもなくはないのかもしれないが、やっぱり広すぎると思う。

 ……これはどっちかというと、立体パズル(罠)の配置される距離が先に決まってて、そして必要な数だけ配置するとこれぐらいの広さになるとか、そういう感じでステージが構築されてる可能性もあるな。

 それならいっそ端を作ってそこに高難易度のパズルを設置、大量の鍵が手に入るとか、しばらくしたら罠が再設置されて空間が縮むとか、それぐらいはあっていいと思うんだが。まだなんかフラグが足りないとかだろうか。

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