第2721話 73枚目:偽りの繰り返し
幸い、と言っていいのかどうか分からないが、そこからしばらく移動したところで、魔視だと例の黒色に塗り潰された壁を発見した。通常視界だと何も無い壁なんだが。
で、これをどうしたらいいんだ? と思ったが、とりあえず灰色の鍵を1本インベントリから出して、その塗り潰されたところに近づけてみた。ら、ひゅっと鍵が壁の中に吸い込まれた。勝手に。もちろん風の動きは無い。
ただその直後に、カチャッと鍵の外れる音が聞こえてその場に窓が出現した。お、中が覗ける。
「あれっ、フライリーさんじゃないですか」
「んえ!? 先輩!? 何で窓の外にいるっすか!?」
「この窓壊せるんですよ。そして出れます」
「マジっすか。え? じゃあ扉は?」
「罠です。あ、あと出る前にランプを確認してください」
「扉が罠は酷くないっすか!?」
酷いと思うよ。ただそう言いつつも素直にランプを確認して灰色の鍵を回収し、魔法で窓を吹っ飛ばして出てくるフライリーさんは良い子だけど。
移動しつつフライリーさんの説明を聞くと、どうやら最初は扉から外に出たらしい。するとここまでと変わらない空間、変わらない罠、「多数生物の立体パズル(罠)」まで一緒で、転移とは? になっていたらしい。
どうやら最初に転移させられた神官組もそちらにいたらしく、合流できたのは良いがどういう事だ? と思いつつ「異界の大神の小さな像」を集めた結果、総合最大数が2百に上がっているらしかった。そして中央の大部屋にいる推定ラスボスも、雑魚モンスターの召喚数が上がって、モンスターへ強化魔法を使うようになっていたとの事。
「時間ないのに、あと何ステージあるんだよこれ!! って結構な人数が叫んでたっすね。たださっき、クリアタイミングでもないのに揺れる感覚があってあの部屋に戻ってたんで、外からだとどんなタイミングでもこっちに連れてこれると思うっすけど」
「転移直後でないといけないのか、それとも通常クリアの時でも一緒なのか、それは難しい所ですね。……とりあえず、次に見つけたらこっちに呼ぶのではなく、向こうに戻って話を広げてもらいましょう」
「あ! それはそうっすね!?」
「いえ、今回は私が外に出てきてほしいと言いましたので。まず私の方の説明をするべきでした」
なおその、合流したように見えた場所でも私を含めて数名が行方不明のままだったので、窓から脱出する事が正解だと気付いたのは私1人ではなかったようだ。良かった。地図は共有できてないけど。
ただまぁフライリーさんも魔力制御は得意分野だ。罠の回避も慣れたものなので、次の分かれ道で違う方向に進む事にした。ちょっとでも手数が必要だからな。話を持って帰ってもらうにしろ、罠を解除して鍵を集めるにしろ。
しかし、景色はともかくとして罠の密度が変わらないな。今はどの辺にいるんだろう。一応一定方向に進んでいる筈なんだが、他の人を探すのなら脇道から埋めていった方がいいんだろうか。
「全体の構造はこちらも変わらないでしょうし、だとすると、端と中心のどちらかは確定しておきたいところですね。探索すればするほど端が広がっていくとかでなければ、ですけど」
そして推測通り、真・ラスボスとの戦闘にも鍵が必要だとすると……やっぱり山のように必要なんだよな。これは急いで話を持って帰ってもらって、転移のタイミングで扉は罠だって広めてもらわないと。
……いや、その話が広がったら窓が罠になる可能性もある、か? ありそうな気がする。何せこのタイミングで扉に罠を仕掛けるんだからな。もちろん外から声をかける事が可能、というのがずっと続く仕様なら窓で確定していいと思うんだが。
「……。出口が、ベッドや机の引き出しに変わる、って事は、流石に無いと思うんですけど」
変なところで変なひねりを入れる癖のある運営だからなぁ……。
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