第2717話 73枚目:2回目

 最初の1時間で私が回収できた「異界の大神の小さな像」は5個。それでもさっきのステージよりは多い。

 というか途中で他の召喚者プレイヤーと鉢合わせたから、ステータスの高い私が道を戻ったんだよな。地図の共有にはタイムラグがあるから、多少は仕方ない事なんだが。

 もちろん今度は他の召喚者プレイヤーも最初からマップの端を目指し、「多数生物の立体パズル(罠)」を解除する方に回っている。回復させて「異界の大神の小さな像」を回収する別動隊も動いている筈だし。


「で、回収できた「異界の大神の小さな像」は89個。前回より6個多いですが、まだ足りませんか」

「そうですね。ただ時間も半分の3時間で回収できていますので、恐らくいくらかは開始地点の運にもよるものと思われます」


 まぁそれはそう。出来れば90個以上回収しておきたいところだが……何かコツとかあるんだろうか。後で誰かに聞いてみよう。

 そしてそれだけ時間が経っていれば、行方不明者の一覧も出来ている。その数合計643人。うち、3人が最前線に居た召喚者プレイヤーだ。後は全員儀式関係者か、関係者にテイムされた状態の仲間となる。

 ……。3人の端数。を除くと640人。80の8倍。こう、何というか、見覚えのある数だな?


「……エルル」

「どうしたお嬢」

「ちょっとこれ、持っててください」

「……これ、集めてる像だろ? いいのか?」

「どうせ端数が9個出ますし、もし推測が正しければ、今持っているべきは個の戦闘力が高い誰かですので」


 召喚者プレイヤーの人数も増えてきたから、この程度だと「極一部」になるんだよな。まぁだからこそこの広いステージも何とか探索出来るし、この速さで「異界の大神の小さな像」を回収できたんだが。

 しかし問題は、空間への干渉を行っていた儀式の関係者がごっそりいなくなった状態で、どうやって中央に辿り着くかだ。どうすればいいんだろうな。もしかしてそれも「異界の大神の小さな像」もしくは「異界の大神の少し小さな像」を持ってれば辿り着けるとかだろうか。

 なお私がエルルに渡した1個分はカバーさん経由で司令部に報告している。同じことを考えたらしいベテラン勢がそれぞれ個で強い仲間に「異界の大神の小さな像」を渡していたからちょっともめたが、エルルはまぁまず間違いないって事でそのままになった。


「で、行ってみたら空間の拡張は無かったんですか?」

「無かったな。攻撃の誘発はしてないが、たぶん相手もさっきと一緒だったぞ」


 中央に辿り着く方法を検証するには、実際に「異界の大神の小さな像」を持っている誰かが中央に先行すればいい。って事で、残りの端数である8個分を誰に持たせるかで議論している間に、エルルがさくっと行って戻ってきてくれた。そうか、やっぱりそれが正攻法か。

 となると問題は戦力バランスだな。回収できる「異界の大神の小さな像」が90個を越えたら、更に一度にどこかへ移動する人数が増えるだろうし。たぶん。90×9で810人に増えると思う。

 ……それでも召喚者プレイヤー全員を移動させるには足りないな。もちろん、百個全部集めたとしても残り時間的に間に合わない。効率を上げて推定ラスボスとされていた人形を倒すまでの時間が短くなってもだ。という事は、何か、全員を移動させる方法が、別に存在する?


「……。まぁ、像を持っていない人は、戦闘している間休憩できるとして。それでも割とギリギリなのでは?」


 まぁ別の方法があったとして、それは恐らく行方不明者達がいる場所なんだろう。とりあえず今回は急いで中央の人形を倒してもらうか。手順はもう分かってるから、最初から道連れ効果で状態異常を積み込めるはずだし。

 とかやっている間に、司令部がベテラン勢よりも後続勢を中心に「異界の大神の少し小さな像」を渡す事にしたらしい。まぁエルルがいるし、他の端数もとい選抜組だけでも相当な戦力だからな。

 向こうでも手数が必要、という可能性もあるし……こっちに残す戦力も必要だ。しかし大神の加護は阻害されなくなった筈なのに連絡が取れないとか、ほんともうそういうとこだぞ、と。

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