第2713話 73枚目:対処順調

 どうやらこれで正解だったらしい。


「あの明らかに過剰な装飾、何割かは身代わり系だったんですね」


 私は引き続き様子見をしながら、部屋の中と外のあちこちに状態異常回復の魔法を飛ばしている。どうやら攻撃の横取りは防がない仕様になっているらしく(なっていたらタンクが働けないので当然か)、ホーミング性能がついても普通にターゲットを移す事が出来た。

 で、部屋の外に出るとそれ以上推定ラスボスは攻撃で追いかけない。それにサーニャが途中から、他の人に飛んでいく攻撃も相殺すると一気にホーミングするところまで攻撃が強化されると気付いて、周りの通常モンスターの排除も捗るようになった。

 すると当然攻撃が飛んでくるペースも上がる訳で。何体目かまで数えてはいないんだが、推定ラスボスが身に着けていた指輪が1つ、攻撃は相変わらず通ってないのに、音を立てて砕け散ったんだよな。


「装備破損までは32体かかりましたが、回収したアクセサリを解析した限り、効果が重複するタイプです。つまり数が減れば減る程装備破壊は加速するでしょう」

「まぁ城にいる魔族が身に着けていたんですから、その王なら当然身に着けているでしょうね。それも更に良いものを」

「問題はあの謎の力場か守りの源がどれかという問題ですが、状態異常を魔力や体力に変換する装備は確認されていません」


 え? そんなのあるの? 皆欲しい奴じゃん。……と思ったら、変換するたびにごっそり耐久度が減る上に、高難易度野良ダンジョンの宝箱限定レアドロップらしい。人の手では作れない上に実質回数限定か。なるほど。

 私はカバーさんに教えてもらった情報だが、どうやら司令部更新の全体連絡スレッドに書きこまれたようだ。大声で全体に周知しないのは、推定ラスボスに与える情報を減らす為だな。一応周りの声は聞いてるっぽいから。

 うん。既に試してみてたんだ。怒らせたら防御に影響が出るんじゃないかって。ものすごい勢いで集中攻撃されてたから、私も防御支援に参加した。怒りの沸点低くないだろうか。


「おっと、また砕けましたね」

「そうですね。この調子ならそうかからず身代わり装備は全滅すると思われます」

「状態異常が通れば、いくら攻撃が届かなくても意味ありませんしね。もしかしたら状態異常を防御か治療している間はあの反射が止まるとかかもしれませんし」

「行動阻害魔法は準備済みです」


 行動が早くて頼もしいな。まぁあのバリアみたいなもの以外にも、それこそ魔法攻撃と物理攻撃のそれぞれに対応した身代わり装備を持っているかもしれないんだけど。

 とはいえ、いくら身代わりできると言っても、上限があるならそれをぶち抜けばいいだけなので問題は無い。個人的にはあの靴を狙って壊しておきたいんだよな。浮いてるって事は機動力が高い気がするし。他にもなんか機能がありそうだ。

 実際、だんだん装備が壊れる音の間隔は短くなっている。ちら、と推定ラスボスの顔を見てみれば、最初の不遜顔はどこへやら、大変機嫌が悪そうだ。まぁ、だろうな。


「儀式の効果かそれとも最初からか、視界の外で何が起こっているのかは把握できないようですね。もちろん把握する方法が無い訳では無いんでしょうけど、見下している相手にそこまでする必要はない、とでも思っているんでしょうし」


 是非ともそのまま油断していてほしいものだが、だいぶイライラしているらしい顔を見る限りは無理そうだ。素直に状態異常の身代わり装備が全部壊れるまで浮いていてくれるかは分からないが、出来れば1つずつ条件は埋めていきたい。

 そもそもまだ第一形態だしな。ラスボスが複数の形態を持つのはお約束だし、ここまでのレイドボスも散々段階を踏まされた。状態異常、物理、魔法の3段階はまずあるとして、属性縛りがどれくらいあるかだな。

 もしくはタイミングっていう可能性もあるかも知れない。一番厄介なのは、その当時の超精鋭が集まっていたせいで初見なのに完封された、“理知にして探求”の所に出てきたボスだが、あれは神の影響もあったから、あそこまでではないと思いたいところだ。

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