第2711話 73枚目:確認

 司令部も全力で大部屋の捜索を開始したようだし、ここまでの地図を共有して全体図にして、そちらの解析も始めているようだ。いやまぁどこにギミックがあるか分からないから、全体地図の解析は前からやってただろうけど。

 とはいえ、ここで足を止める訳にも行かない。反撃された召喚者プレイヤーはギリギリ死に戻りを回避したようだが、ここで死に戻りされると強制退去かつ通常空間にモンスターを出現させ続ける高難易度ダンジョンが出現する。

 まぁ一応踏ん張りスキルや自力復活スキル、あと一部神の力を借りるアビリティと、奥義的な魔法の中には他者蘇生が出来るものがあるらしい。それを習得している召喚者プレイヤーは数名いるという事なので、彼らが最優先防衛対象になるだろう。


「……あの先がそれっぽそうですけど、扉も無いんですね?」

「他の突入路でも扉は確認されていません」


 で、私達も、推定中央の大部屋まで辿り着いたんだが……うん。酷い事になってるな。扉が無いから中の様子が見れる。いやまぁ早く突入しろって話かもしれないんだが、ほら情報は必要だし。外からなんかする必要があったら引き返さないといけないし。

 大部屋と呼ばれただけあって、今いる召喚者プレイヤーと仲間が全員で突入しても十分余裕をもって動けるだけの広さがありそうだ。床が光るとモンスターが出現するが、あれは例によって道連れ能力持ちなんだろう。



 そしてその中央に、ふわふわと浮いている姿があった。金糸銀糸で飾られた豪華な漆黒のローブ。模様は恐らく魔法陣になっていて何かしらの能力付き装備だろう。風も無いのにゆらゆらはためいているのは何故か知らないが。

 その足元に覗くのは同じく漆黒のブーツ。先が尖っているタイプで、足首から上はローブの中に隠れている。こちらも金糸で魔法陣が刺繍されているから効果付きだろう。その靴底が淡く光っているから、あれが浮いている原因だろうか。

 腰部分に太いベルトを締めているが、これでもかと宝石で装飾されていた。本人の指先から肘までぐらいの長さの杖が4本か5本下げられている。下げる場所に空きは無い。まだ使ってないって事だろう。



 もちろん今もその手には杖を持っているが、見えない床につくようにしている黒く真っ直ぐで、先端に巨大なブラックオパールを据えた杯っぽいデザインの杖は、本人の身長と同じくらいの長さがある。

 服と同じくらい黒い肌の手には絶対邪魔になるだろうという数の指輪と腕輪があった。出ているのは杖を持っている左手だけだが、右手も同じような気配がするな。まぁ装備品だとすれば補正が大きいんだろうが。

 で、こちらからは横顔を見る形になるその顔は、肌は手と同じく黒。髪も同じく艶消しの黒だが、腰まである長さが複雑に編みこまれ、首がイってしまいそうな数の装飾が付けられていた。耳飾りも首飾りも過剰なその頭の一番上には、王冠が乗っている。ミルククラウンとかの形のやつ。


「……冠はともかく、目が灰色なのは、たぶん元々の色じゃないですよね?」

「真っ赤だったよ。というか、ボクが戦ってた時は冠も金色で宝石だらけだったから、色が変わってるね」


 ただまぁ、その王冠と目が、石みたいな灰色って言うのは……そういう事なんだろうな。しっかり、一部とはいえ異界の大神の力を取り込んでいるようだ。

 って事はもしかすると、あの「多数生物の立体パズル(罠)」を解除し損ねたら、もっと灰色の部分が多かったんだろうか? 灰色に変わってる部分が多い程力を取り込んだ量が多いって事になるんだろうし。

 と言う事は、灰色に変わっている部分に何か特殊効果がついてそうだな。とりあえず今は目と冠だけだが、司令部に確認して注意しておこう。

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