第2709話 73枚目:突入開始

 素早さと回避力を鍛えて、ひたすら奥地へ進む事を目的とした召喚者プレイヤーもいる。そういう人達が集まって、とにかくひたすら中央に近づいて行った結果、一応力押しでも中央に到達できなくは無さそう、という結論になったらしい。

 何故なら、距離を半分まで詰めたら倍に広がる。これは手動でやっていたらしく、空間が広がっていく様子が見えたんだそうだ。その時は干渉する為の手段が無かったから変化するのをそのままにしたが、あれだけ荒ければ、召喚者プレイヤーでもそれなりに干渉出来る筈だとの事。

 ただまぁあくまでもこれはゴリ押しであり、正攻法ではなさそう、という結論にもなったが。それはそうだな。間違いなく力業だ。では正攻法は何なのかと言えば。


「当然、罠から見つかるあれこれを活用する形ですよね」


 ちなみに今回、儀式的及び力的な意味でのせめぎ合いをするって事で、領域スキルの展開と旗槍の使用は無しでと頼まれている。まぁ仕方ないな。綱引きをやってるところに、勝手に綱を付け足して横から引っ張るようなもんだし。邪魔でしかない。

 種族特性だけならセーフと言われているので、今回は普通に支援していくぞ。主に火力と回復で。バフは……領域スキルが無いからといって、行動事故を誘発する訳にはいかないから、基本竜族部隊の人達だけで。

 レイドボスであろう“呑”むもしくは魔族の王は、このステージの中央にいるのがほぼ確定している。だから突入する為に、最初に空間が拡張されている部分の少し手前で、少人数ずつに分かれて待機している訳だ。


「連絡来ました。これより儀式を開始、空間が縮んだことを確認次第突入をお願いします、との事です」

「分かりました」


 一応屋内だから、私はルイシャンに騎乗していない。ルイシャンには私ではなくミラちゃんが乗り、【人化】を解いた使徒生まれ組を抱えてもらっている。はー可愛い。ルイルがいないから、戻ったらもう一回お願いしよう。

 竜族部隊の人達は小隊単位で分かれてもらい、エルルとサーニャもそちらである。何しろ城を模しているだけの通路だからな。そこまで大人数が一度に行動できるスペースが無いんだ。当然のように罠もあるし。

 罠に関してはだいぶ解除されたんだが、生物の立体パズル(罠)を解除して取り除いた後でもどうもちょいちょい再設置されてるみたいで、あると思って行動した方がいいらしい。となると、まぁ各自で避けるか相殺するかはともかくとして、大人数だと危ない訳だ。


「と、始まりましたね」


 そうこうしている間に、ぶわっと何か波紋のような物が後ろから通り抜けていった。そしてその波紋のようなものが通っていったところから、通路が動いていく。拡張されていた空間が元に戻っていく。

 既にあらかた出来ていた地図がどう変わるのかは分からないが、進むべき方向が変わらないなら問題は無い。だから召喚者プレイヤーが全ての班にばらけて配置されてるんだし。連絡とオートマップの確認をする為に。

 ともあれ、歪められ拡張された空間が元に戻ったら、行動開始だ。モンスターは今のところ罠の解除を失敗して出てきた分しか確認されてないけど、今度こそ「モンスターの『王』」、じゃないな。魔族の生物兵器で汚染されたモンスターが出てくるかもしれないし。


「それでは各自、出来る限り罠は避けつつ、進んでいきましょう。罠以外にも何が出てくるか分かりませんし、出来るだけ本体との戦いの為に色々温存しておきたいところですが、無理そうなら切り札もガンガン使っていいです」

「『『はーい』』」


 よーし良いお返事だ。急ぎ足で罠だけ避けつつ、レイドボスを殴りに行くぞー。

 ……他の通路にいる可愛い好きの召喚者プレイヤーが、私達見たさにすごい勢いのスタートダッシュを決めてるみたいだが、ルイシャンの背中の状態を見たらどうなるだろうな?

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