第2708話 73枚目:警戒進行

 とかやっている間に、1日に足りなかった端数が消化された。端数と言うには時間が長かったが、これでおよそ、加速状態でジャスト3日だ。

 現時点での面積的な踏破率は8割。面積の半分を過ぎたところから実質的な面積が倍になり、更にその半分からも倍になり、と、これ永遠に最奥へ辿り着けないやつでは? という感じになっている。

 まぁ実際はそんな事無いだろうし、検証班が調べた限り、一番外側が本来の空間の大きさだというのは確定だ。つまり中心に近づくほど、何かの力で強引に空間を広げているという事になる。


「まぁ何かというか、異界の大神の分霊もしくは“呑”むなんでしょうけど」

「……。そこが別なのか?」

「ここまでで「モンスターの『王』」と呼ばれていた存在は、魔族の生物兵器と異界の神または修神おさめがみが契約や汚染によって融合したものですからね。もしほんの小さな欠片とはいえ、過去から逃げ出した形になる純粋な魔族の王がここへきているのなら、それは別物になるでしょう」


 実際どうなのかは直接対面して見ないと分からないし、そもそも逃げ出せたかどうかもまだ不確定だ。……が。それがあり得る材料は揃っているし、何のかんのと言ってもそれが一番厄介なパターンだからな。



 何でかって言ったら、ここまでの「モンスターの『王』」と呼ばれていたレイドボスは、まぁ、言っては何だが狂っていた。邪神とされるほどの相手と契約してしまうか取り込まれていたのだから、まぁそれはそうなのかもしれないが。

 つまり理論的な考え方が(比較的)出来なくなっていた状態な訳だ。元が生物兵器だったせいかもしれないが、分霊とはいえ大神を取り込んで無事で済むかって言うと、まぁ無理だろうし。

 すなわち、本来の“呑”むと呼ばれたレイドボスは、もうちょっとこう、知能があれだった可能性がある。だがそこに欠片でIFとはいえ、過去の、バリバリに魔族の王をやって大神を研究し利用しようとしていた時の「自分」が合流すればどうなるか。



 ……頭を使い始める可能性が高いんだよ。もちろん最後の大陸に入ってからこっち、ずーっと何らかの力の流れが終着点である東端に流れて行ったのも忘れてはいけない。絶対に学習している。こちらを「知っている」。

 それに純粋な魔族の王の部分が増えるとも言い変えられる訳だ。すなわち制御が追いつく可能性がまぁまぁ高い。制御できない巨大な力より、制御できるそこそこの力の方が強いのは良く分かっている事だし。

 ただでさえ元々、生け捕り目的だったから殺し技が使えなかったとはいえ、全力支援されたサーニャを相手にゲートを守り切った程度には強い相手だぞ? 側近もいて地の利も向こうにあったとはいえ、全力支援されたサーニャを相手にして防衛対象を守り切ったんだぞ?


「それだけの制御力と技術力に大神の分霊を取り込んだことによる大幅に上昇した出力、何なら魔力の回復速度も上がってるでしょうね。そういう相手が待ち構えている可能性がある訳ですが、他の場合と比べてこれが一番最悪でしょう?」

「…………まぁ」

「そして今までの事を思い返すに、こうなったら最悪だという展開こそが待ち構えていました。何なら更に斜め上か斜め下に最低だった事もあります」


 と言う会話が、生物の立体パズル(罠)シリーズから手に入れた飾りがある程度溜まったから司令部に渡しに行った時にしたが、実際そうだろ。これが最悪、という予想こそドンピシャだったじゃないか。更に輪をかけて最低っていう場合もあったけど。

 ま、何はともあれ、このステージの中央に辿り着かない事には話にならないんだけどな。そこに“呑”むもしくはあの魔族の王がいるのはほぼ確定している。でなきゃ、こんな風に空間が拡張されたり迷路が作られたりはしない。

 そしてその方法も、恐らくは、そろそろ確定する事だろう。何せ、そろそろ見つからなくなってきたからな。生物の立体パズル(罠)シリーズが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る