第2701話 73枚目:罠様々

 牢から外に出てみると、内装はただの見た目だったのか、普通の廊下に出た。ついでに後ろを振り返れば、出てきた筈の牢は跡形なく消えている。どうやらスタート位置の安全を保障するだけの空間だったようだ。

 と言う事はもしかしなくても、ここから先の危険度は大変高いのでは。と思ってざっと周囲を見回すと、まぁあるわあるわ魔法罠が。更に言うなら私の足元にも罠があり、周りを見ている間に何かがチャージされるような形で魔力の色が濃くなっていっている。


「いやぁしかし、これは酷いですね」


 恐らく一定時間この場所にいると発動する、と判断して、一旦何の色も無い場所に空気の足場を設置して移動する。……と言っても、時々サーチライトで照らすように周囲をぐるっと舐めていく色(力)があるので、あれが罠の反応する範囲なんだろう。

 気を付けていれば避けるのは簡単だ。だが気を付けていなければ、例えば恐らく今も大変な事になっているだろう掲示板を見たりしていれば、恐らくすぐに引っかかる。


「あんな警告があった以上は、即死級の罠ばかりで埋まっている可能性がありますし。掲示板やウィスパーといった召喚者特典大神の加護による連絡が阻害されないとしても、邪魔は全力でするつもり、と」


 廊下、と思ったが窓が無いので、実は普通のダンジョンと同じくただの迷路なのかもしれない。まぁあの城も、窓がない廊下がそれなりにあったからそっちかもしれないけど。

 とりあえず右と左に行くことができるが、サーチライトのように周囲を舐めていく元が右にあるようなので、とりあえず右に進む事にする。オートマップは、よし、働いてるな。

 基本的に空気の足場を渡る事で罠を回避し、移動して行く。そして定期的に周辺探知をしている源を見つけた。案外近くにあったな。


「……。モンスター、ではないですよね?」


 そこにあったのは、恐らくは何かを模った像だった。かなりリアルだからちょっとモンスターかと思ったが、黒っぽい金属で出来ているようだ。ただこれは、何だろうな? 一言でまとめるならキメラタイプの異形なんだが、メインになっているのが何か分からない。

 同じ比率で、たぶん、蛙と山羊と鶏が合成されている、んだと思う。パーツもバラバラごちゃごちゃ、立体パズルだったら投げているぐらいに難易度が高いぞ。

 ……立体パズル、と思い浮かんで嫌な予感がしたので、一応【鑑定☆☆】。


[アイテム:3生物の立体パズル(罠)

説明:3種の生物を模った立体パズル

   解除には魔力の操作を用い、間違えると罠が発動する

   解除出来た場合、周囲の罠も解除される]


 罠かぁ……罠なんだな、これ……そして罠の内容は私では分からないんだな……。

 何の罠が発動するかによってリスクの大きさが変わるからなぁ……と思いつつ更に念入りに罠と出た立体パズルだったらしい金属像を見る。大きさは私が抱えて丁度いいぐらい。サーチライトのように一定間隔で周囲に魔力が向いているから、これに引っかかっても罠が発動するんだろう。

 とりあえずその金属像の全体図が分かるスクリーンショットを撮って、サーチライトのような色(力)を避けて、カバーさんに報告メールを手早く送る。掲示板を見ている余裕はない。割と周りを探す色(力)の巡る周期が短いからな。

 数秒して、返事があった。避けながら確認した結果。


『こちらでも似たような像を発見、封印魔法で機能停止する事が確認された為、現状そのように対応しています。解除は可能な範囲でとなっており、罠の解除を専門にしたパーティが数組係で探索及び解除を行っています』


 なるほど、そういう事になっているらしい。

 まぁこの罠が解除出来る人なら、封印魔法の解除も出来るか。なら私も時短として、このサーチライトみたいに周囲を探す罠だけ封印して探索範囲を広げよう。

 いや、封印して機能停止するんなら、ここで一旦掲示板を確認しておくべきか。司令部も既に動いてるみたいだし。

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