第2700話 73枚目:ラスト探索

 通常空間に戻ってきた時点で既にほぼ日は暮れていて、そこからは灯りを掲げながら行動している。夜の暗さを苦にする召喚者プレイヤーは少ないが、睡眠の方はそうもいかないからな。

 竜族や物質系種族のように、数日ならぶっ続けで動ける、っていうのは特殊例だ。召喚者プレイヤーであっても、特に戦闘するなら連続して動けるのは8時間ぐらいだろう。トップ層なら12時間まで伸ばしているかもしれないが。

 まぁその辺の調節は、召喚者プレイヤー召喚者プレイヤーに慣れている住民の仲間にとってはいつもの事となっている。きっちり、加速状態の空間で休んでから戻ってきているので、残り時間ぐらいはぶっ続けで動ける。そういう状態にはしていた筈だ。


「……こう来ますか」


 そうだな。空間の扱いに長けている。それは分かっていた。だから地上に何も無くても、海の上も中も何も無くても、それでも探す手を止めなかった訳だ。

 私も魔視の出力を上げて捜索に参加したし、海岸の東端、岬のようにとがっている場所を中心に探すこと半時間。残りイベント期間が内部時間で5時間となった時、空間がかなり大きく揺れた。

 やっぱり! と叫んだのは誰だったか。来ると思っていたのが来ただけなので、何が来る、と全力で警戒する中で、地面から浮いてしまう程の揺れからの落ちる感覚があった結果。


「どう見ても、あの城の中なのはいいとして、これは厄介な……」


 一瞬ブラックアウトした視界が元に戻ったら、私は騎乗していた筈のルイシャンからも降りた状態で、小さな部屋の中に立っていた。そのデザインがどう見てもあの城の貴種用の牢だったのは、まぁそういう事もあるだろう、だったんだが。

 部屋の中のものを調べても、破壊不能というか接触不能だった。何か不思議な膜が張られているようで、魔視でみても何も無いから運営の仕業なんだろう。なので、絶対鍵になる少しだけ空いていた扉に近寄ったら、こんな警告が出てきたのだ。


『警告!

 これより先では、一度HPがゼロになり、復活スキルやアビリティの発動が間に合わなかった場合、通常空間へと強制退去させられます。

 強制退去させられた場合、二度目の突入は不可能です。

 また強制退去が発生するたびに、通常空間にモンスターを出現させ続ける高難易度ダンジョンが出現します。

 全召喚者プレイヤーがこの空間から強制退去させられた場合、通常空間に強化されたレイドボスが出現します』


 ……死に戻りに制限をかけてくるとか、完全に召喚者プレイヤーを殺しに来てると思うんだが。というか、召喚者プレイヤーの利点を自ら潰しに行くスタイルってそれはいいのか運営として。

 そして通常空間へ強制退去+全召喚者プレイヤーが強制退去で強化レイドボスが出現って事は、内部で生き残って何か行動をしないと攻略できないタイプのレイドボスって事でいいな?

 まぁ空間を分ける以上は外と中で協力するっていうのはここまでにも散々やって来た事だが、どうしたもんか。もちろん召喚者プレイヤーと限定されている以上、住民の仲間が生き残ってても召喚者プレイヤーが全滅したらダメなんだろうし。


「と言う事は、召喚者プレイヤーを狙い撃ちにした、召喚者プレイヤー限定の攻撃とかもありそうな感じでしょうか」


 確かに、大神の加護を分け与えられたテイム状態のって条件だったら、それこそエルルとかサーニャが絶対落とせなくなるからな。私でもそれは無理って言うのは分かる。むしろその条件で下手に私を落としたら護衛対象がいなくなって、更に止められなくなるし。

 ……それと、ここはリアル1時間が3日になる加速状態のようだ。残りは通常空間で5時間だったから、残りおよそ3日半よりはあるってところか。時間が伸びたのは良いが、仕留められるかどうかはかなり怪しくなったな。

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