第2693話 73枚目:防御成功

 エルルとサーニャの無事、ではなく生存を確認し、異界の大神の分霊の無事を確認し、そこでようやく後ろを振り返ると、十数名の召喚者プレイヤーがギリギリ生き残っていた。まぁ私が生きているんだから、私の後ろは一応安全圏と言えるだろうな。

 とはいえ、司令部が拠点としていた城の隅にある、防壁に接した詰所のような場所。内装にも手を入れるついでに強化されていた筈だが、僅かに瓦礫が残っているのみだ。

 ん? という事はまさか。とその時点で私は気付いたんだが、エルルとサーニャより前にある不自然な地面の残り方。あれはどうやら召喚者プレイヤーが防御しようとして、防御しきれず吹っ飛ばされた跡だったらしい。


「死に戻りは発動し、目に見えて残っている後遺症なども無いようです。ただし装備は良くて半壊、現在後方で立て直しているようですが、再合流には少々時間がかかるかと」

「……あぁ、そうか。召喚者って死んでも死ななかったな」

「ボクらの前に出るとか、流石にちょっとびっくりするよね」


 私は実質領域スキルにリソースを叩き込んだ分のダメージだけだったし、エルルとサーニャも怪我が酷かったが、致命傷ではなかったようだ。私の後方に駆け込んで助かった召喚者プレイヤーが現状把握と点呼を行う頃には、何とか持ち直していた。

 で、どうやら後方で連合軍との連絡役として残っていた人に聞いたところ、やっぱり超巨大な爆発が起きたらしかった。城は空間的に封鎖されている筈なのに、その封鎖をぶち破る程の爆発だったようだ。

 ……まぁ、そんな爆発が起きて、城の主に西側に広がっていた街が無事で済む訳もない。封鎖していたのが幸いしたか、一瞬で全滅とまではいかなかったものの、かなりの被害が出たようだ。


「幸い、連合軍に被害はありませんでした。突然の爆発による混乱はありますが、それも軽微で収まっています。城の封鎖は爆発によって強制解除、防壁の9割以上が消失しています」

「そらな」

「それはそう」

「こちらも突入組はその大半が死に戻り。しかし主目的であったゲートの破壊及び情報収集、異界の大神の分霊の回収は成功。よって生存者もこのまま撤退し、連合軍に合流します」

「司令部、東側経由は変わらんの?」

「変更なしです。もっともそちら側の防壁も壊滅しているので、火力によって突破する必要はありませんが」

「せやな」

「いやーまさか自爆するとは……」

「流石に思わんわなぁ」


 なおこの手早い確認が行われている間に、既に分霊はお菓子もぐもぐを再開している。とはいえ抱えているのは私ではなくソフィーネさんだが。彼女の方が身長的にも抱えやすいし、ソフィーナさんを抱えて走り回る事も多いからな。誰かを抱えて動くのに慣れてるから。

 本気戦闘をしていたサーニャも話を聞きながらご飯を食べていたし、エルルの口にも私がご飯を突っ込んだから、小休憩にはなった筈だ。さっき大量出血してたんだから食べておけっていうのに。

 もちろん私も薬膳スープの残りを飲んでいる。いやー、やっぱ瞬間的な満腹度の回復ってなるとこれが一番だな。これ自体にも回復効果があるし、その後の回復量も上がるし。


「……自爆かなぁ」

「サーニャ?」

「さっきの爆発。自爆っていうより、どうせあの、ゲートだっけ。あれが使えなくなるなら、最後に有効活用しようとか……そんな感じだったような気がするんだけど」


 では移動開始、の号令で動き出し、私は領域スキルを通常展開したまま付いていく。もちろんエルルとサーニャが揃って一緒に動いてくれているが、今回一番守らなきゃいけないのはソフィーネさんの抱えた分霊って事で、私達は後方だ。

 さっきの爆発を防御した怪我のせいで、サーニャのツヤツヤな長い黒髪にもところどころ血がこびりついている。流石に軍服(鎧)は丈夫で小破に留まったようだが、戻ったら即メンテナンスした方がいいだろう。出来るかどうかは別として。

 ただまぁ、サーニャの懸念には賛成だ。消化不良が過ぎる。そもそも、魔力と空間の扱いに長けている部分を伸ばした上に、時間にも干渉できるようになった相手だろう? 正直、素直に死んでくれたとは到底思えないんだよな。

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