第2687話 73枚目:鍵の使い方

 さて、鍵の保管室が見つかって、ソフィーさん達もフライリーさんもルチルも部屋探しの方に回っている。にもかかわらず一番色々な意味で防御力が高い私がここに残っていたのは、一部の鍵には認証式の鍵がかかっていて、それを外すのに時間がかかったからだ。

 鍵に鍵をかけるとは、と思ったんだが、重要な設備や部屋の鍵、それも滅多に使わない場所のものであるなら、大いにあり得る。とりあえず取り出せる範囲の鍵を持ってお城を巡った組の報告を見ても、その推測は間違ってなかったようだ。

 なおかつ観測班はその認証式の鍵を解析する過程で、鍵の持ち出し履歴を参照する事に成功したらしい。それによれば、長い間使われていなかったのに、ここ最近になって急に利用頻度が上がった鍵があった。


「1つはゲートのある部屋のもの、1つは塔の牢屋にあった隠し部屋のもの。そして1つは、ゲートのある部屋に隣接した場所のものだと推測されます」

「使った場所も分かるんですか?」

「鍵の材質と使用する部屋の座標に関連があるようです」


 ……。

 そっちの方がヤバくないか?

 いやまぁ空間を歪めて作られた場所に干渉する鍵なんだから、そういう作り方をしているのかもしれないし、そういう作り方をしている以上はそうやって調べるというのもアリなんだろうけど。


「ちなみに、ゲートの部屋の戦況ってどうなってます?」

「入口が狭い為に戦力が入り切らず、また特殊な防御で踏み込んでも外に追い出されるようです。現在唯一しっかりと踏み込めたサーニャさんを援護する方向で団結していますがちょっと手が足りないと報告がありました。ただし入口の拡張や他の場所に入口を作る方も空間的防御で対応されています。その分だけ相手の手を取る事が出来ているので、ゲートでの行動はどうにか封じている状態ですね」

「神の敵認定が入っているのにサーニャで手間取るとか、正当進化で驕るだけはあるという事でしょうか」


 神の敵認定=『勇者』補正が十全に発揮されるって事だからな。その状態のサーニャで時間がかかってるって、相当強いぞ。それこそ、ベテラン勢でも総力を挙げるレベルだ。つまりレイドボス級である。

 つーか鍍金の竜ですら1人で倒すようになってるんだぞ最近のサーニャは。それも素の状態じゃなくて2段階ぐらい強化したやつ。流石に無傷とはいかないらしく、槍がひん曲がっていたり鎧が壊れたりしているようだが、それでも鍍金の竜の2段階強化されたやつだぞ? それをソロとか、ちょっと意味が分からない。

 エルルもちょっと思考停止したらしいからな。なお、エルル自身は種族特性からの不意打ち強攻撃一発で大体どんな奴でも倒せるので別枠とする。ルシルがその領域を目指しているそうだが、本当にどこまで腕を上げるつもりなのだろう。


「認証鍵、解除できました!」

「分かりました。それでは行ってきます」

「お気をつけて」


 と、思考が横に逸れたが、つまりそういう戦闘が行われている場所の近くにある、下手をすればその部屋の中にある隠し部屋に異界の大神の分霊がいる確率は高い。だからこそ、耐性を含む防御力が一番高い私が持つのがいいだろう、と司令部は判断した訳だ。

 それに、私はすっかりマイナス効果が鳴りを潜めた「異界の刻印」がある。これが異界の大神にとっての目印あるいは加護のようなものだとしたら、これを持っている私が直接対応するのが一番態度を軟化させてくれる可能性が高い。


「さて、それでは行きますよ、エルル」

「…………いつから気付いてた?」

「え? だって私が1人になったんですから、いるでしょう?」

「……。俺に探索を命じたのはお嬢だと思うんだが」

「もう探索するところなんて残ってないじゃないですか。ここの鍵を使う場所以外」


 ちなみにこの理由は後付けであり、実際は魔視で視界の端に闇属性の魔力があった、かつ、その人サイズの魔力をこの場にいる全員がスルーするから気付いただけである。種族特性も魔視ならみえるからな。

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