第2685話 73枚目:全体探査
それでも捜索できていない場所はほぼ無くなっているし、ここで主戦場が城全体から城の中心に移動するのは正規ルートだろう。と言う事で私達も移動する事になったんだが、私はここでちょっとだけ別行動を挟んだ。
城は完全に封鎖されているが、それは空間的なものを含む。つまり境界線の強度は低いが亜空間のようなものであり、そんなに距離を離さなければ城の外に出る事も可能だ。
なのでかなりギリギリまで城から距離を離し、境界線に足をつけるように周囲をぐるっと回って見つつ、かなり魔族側と思われる力……光の一切を吸収するような黒がだいぶ削られ、割と見慣れた
「……。あの塔は貴種の牢屋があった場所ですよね?」
「そうっすね。流石に力場的除染は間に合わなかったらしいっすよ」
「あちらの角が地下牢のあった場所」
「当たりよ。あそこからあのリネン室の床まで穴が掘られていたらしいわ」
「あの辺、城と塔の間でへこんでいるところが私室に近い牢でしたか」
「そうですね。もちろんこちらは徹底的に破壊、に近い程度に色々お掃除されたようですけど」
『まだ残ってるんですねー』
通常視界で見える範囲しかみえない筈だが、構造物もしくは地表にまでにじみ出ているという事なのか、牢があった場所にはその黒い色がみえていた。いやほんと、そこから人が再び入ってないだろう塔はともかく、私室周辺はだいぶ人が行き来した筈だが、まだ残ってるのか。
もしくは執着やら何やらがあったか、あるいは内側は綺麗にしても外側に追加した防御が残っているか、可能性は色々浮かぶがまぁそれはともかく。ぐるっと回ってみて、もう一点、外から見てもしっかり黒い色が残っている場所があった。
全体連絡掲示板で探索済みの範囲を再確認するが、ここには確認の手が入っている。だが魔視であれほど強い力がみえるのであれば、そこには何かある筈だ。
「そりゃそうでしょう。魔族の正当進化なんですから、空間を歪めて何かを隠すとか絶対に得意でしょうし」
「間取りが役に立たないとか、ここにきて本当にうれしくない情報ね」
「流石にコストとか手間とかの観点で、本当に重要な場所にしか使ってないと思いたいところですけど」
「他の場所に使わない事で見破られるリスクを下げるっていうのもあったっすかねぇ」
『ごしゅじんの嫌な予感はこれでしたかー』
うん。何せそれは、まお……城の中心にある一番高い、尖塔みたいになってる場所の頂上だったからな。どうやら特殊な光を発生させる装置があったらしく、遠くへ灯りで通信する為の場所だと思われていたらしい。
まぁ大体の場合は直接移動する方が早い竜族ですら手旗信号を使っているんだ。どう進化したとしても、移動するより連絡した方が早いのは当然だな。そしてそれがあった事で、その場所は探索完了とみなされたのだろう。
だがこちらには、空間に特化している訳では無くとも魔力系の感知も操作も得意な魔法使いが3人もいる。と言う事で、掲示板には一応報告を上げつつ、外からその尖塔へ移動した。
「とりあえず軽く領域スキルを展開して」
「先輩、どんどん領域スキルの扱いが軽くなってるっすね」
『御使族の皆様からは、スキルとして取得するにはかなり修行が必要って聞きましたよー』
ええい仕方ないだろ便利なんだから。というか【調律領域】の元が結局何で取得できたのかは未だに謎なんだし、その辺怒られたって私には分からん。そもそも必要だからやるんだし、あんまり言わないで欲しい。
で、領域スキルを展開して魔族の力を塗り潰す。もとい力場的浄化を行う。これでまだ黒い色が残っている場所が、空間を歪めて何かを隠している場所だ。
「あ、ここまで来たら私にも分かるわ」
「同じく分かるっす」
『これを誤魔化すのにしっかり力場的に染め上げていたんですかねー』
「その可能性は高そうですね。それにしても、随分と嫌な感じがします」
ぶわっと黒が銀に塗り替えられる。魔視の強度をそのままにしていた私には文字通り一目瞭然だった訳だが、他の4人にも分かったようだ。まぁソフィーネさんも元ヒーラーだし、魔力の感知力は高いか。
しかし、装置の上とか下とかじゃなくて、柱の1本に細工するとはね。実はまだ異界の大神の分霊がいると決まった訳じゃないんだが、相当見られたくないものが隠されているようだ。
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