第2683話 73枚目:城内戦

 城の中は酷い有様だった。

 既に大分非戦闘員は探索行動中に無力化されていた筈だが、それでも人数的に言えば半分以上は残っている状態だ。隠密しなくなった召喚者プレイヤー勢が一気に行動開始すれば、当たり前だが衝突する。

 フリアド世界において、特に魔法の研究者っていうのはそのまま一流の魔法使いだ。もちろん反射神経や実戦経験なんかの部分で純粋な戦闘職には勝てないかもしれないが、知識がそのまま力になる分野だからな。


「もはや見る影も無いというか、戦場ですねぇ……」

「屋内戦ならまだ加減してる方じゃないかしら」

「一応壁を壊さないようにはしているみたいですね」

「むしろ魔族側が壊してねーっすかこれ」

『壁が捻じれてるのはたぶんあちら側の攻撃でしょうねー』


 若干どういうことなのという感想が出る場所もあるにはあったが、そんな会話をしつつ私達も遭遇した相手は倒してるんだけどな。もちろん峰打ちというか、手加減はしているが。

 私達は現在、前衛2、後衛3なので、ルチルに【人化】を解除してもらって移動している。先程ソフィーナさんが言ったように屋内戦なので、私はレイピアでの戦闘だ。

 ……若干ナージュの加護の実践投入って側面もある。いやぁ、やっぱ酷いわこれ。詳細ですらターゲット能力、弱点属性付与、脆弱ターゲット能力っていう、それはダメだろって効果が書いてあったのに、たぶんこれ、それ以上にクリティカル率と攻撃精度も上がってる。


「……あの、ところで先輩。何か後ろから見てる限り、明らかに攻撃のクリティカル率がおかしいんすけど。加速中のステージでレイピアの訓練更に積んだっすか?」

「一言で言うとナージュの加護です」

「あぁ、工場長ね……」

「私でもいい加減酷いと思いましたけど、それ以上なんですね……」

『そう言えば良くお話しされてるのを聞きますねー』


 だから、かなり手加減するのに気を使っているんだよな。うっかり弱点クリティカルからの即死が入ったらヤバいから。むしろ手加減の為に加護を外そうかと思うぐらいだ。

 このステージに来てる召喚者プレイヤーは、全員3柱の修神おさめがみと2柱の神を助けている。だからそれに応じて加護や祝福を貰っている筈であり、ナージュの加護及び祝福の方向性は以前ちらっと周囲に聞いた通りだ。

 と言う事は当然、ソフィーネさんもソフィーナさんもフライリーさんも加護を持ってるって事でだな。


「加護同士の相乗効果でさらにアレな事になってる可能性も無くは無いんですが」

「あー、ありそう。すごくありそう」

「ありそうですね……職人の皆さんも、連携を大事にしていましたし……」

「言われてみれば、敵に対してはかなり容赦ない方の神様っしたもんねぇ……」

『そんな感じの神様だったんですかー?』


 若干頭が痛い、と懸案事項を口に出すと、次々同意が返ってくる。だよなぁ。そんな気が、まぁそこそこするよなぁ。

 いやいい事なんだが。いい事ではあるんだが。連携で威力が上がるのはいい事で間違いない。ただ今回に限っては、オーバーキルしちゃいけないという縛りがあるから大変なだけで。

 単なるダメージレースとか、それこそ今までの時間が危ないレイドボスとか、何ならエンドコンテンツがほぼ確定した底の無いダンジョンとかなら、これほどに火力が跳ね上がるのは良い事なんだけどな?


「まぁでも、ワタメミちゃんの分霊を連れて帰った人は所属クランメンバー全員の加護が割り増しになったらしいっすし、これでもたぶんまだマシなんすよね」

「えっ」

「え?」

「待ってちぃ姫、何今の、えって」


 おっと、それもあったか。まぁそれはそうなんだろうが。加速状態で数日って事は、通常空間でもそれなりに時間経ってるだろうから、ヘルマちゃんとアリカさんがおもてなししてくれているだろうし。

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