第2682話 73枚目:急襲号砲

 生存者は無事にまお……城から連れ出され、まず召喚者プレイヤー陣営に保護された。そこから種族を調べて連合軍に連絡を入れて、対応する種族の所に保護してもらう。どうやら行方不明になっていた人達だったらしく、結構騒ぎになったそうだ。

 なお城内探索班は、「一緒に捕まった」が「同じ檻にはいない」という生存者の証言と、今回発見された地下牢の場所を元に他の牢屋に重点を置いて探索。城の構造が大体分かっていたのもあって、他にも3ヵ所の檻が発見された。

 1つは同じく地下牢だったが、1つは高い塔をそのまま檻にしたタイプで、1つは隠し部屋として作られていたらしい。高い塔にいたのは貴種と呼ばれる種族であり、隠し部屋にいたのは種族関係なく美しい人達ばかりだったので、まぁ、分けられた理由と言うのも何となく分かるが。


「いやぁ本当になんというか、神の敵認定で何も間違ってないんだなぁとしか……」

「よくまぁここまでテンプレ通りの行動を取るわね」

「よくあるからテンプレって言われるんですよソフィーナ」

「ソフィーネさん何かあったっすか? いや言いたくないなら聞かねーっすけど」


 若干ソフィーネさんが闇を覗かせた気もするがまぁそれはそっとしておくとして。

 そうやって牢屋をメインにして探索し、生存者を保護して連合軍のところまで連れ出すという事をしている間に夜が明けた。牢屋を見張る仕組みと言うか罠もあったが、それは無効化されている。

 とはいえ、流石に夜が明けて魔族が行動開始をすると、やはりバレる事は避けられない。だが、ここまでの移動に半日、そしてそこから丸1日の探索をして、生存者発見の知らせと実際に保護してもらった事でどうやら移動速度が上がったらしく。


「ニーアさん、ニーアさーん」

「はい何でしょうか末姫様!」

「部隊全体に連絡を。連合軍の本隊が本日昼には到着する予定という事で、前倒しで城の封鎖を行い、大規模探索及び破壊行動の許可が出ます。よってそれ以降は撤退指示が出るまで異界の大神の分霊捜索を優先しつつ、ゲート関係の資料の確保、ゲートそのものの破壊を目標にした行動を開始します」

「分かりました、伝達します!」


 城の端で、召喚者プレイヤーと住民が情報を共有する為の場所まで下がって、城のあちこちに散っているうちの竜族部隊の人達に情報を伝えてもらう。ニーアさんが一番速くて確実だからな。頼りになる。

 そして他の召喚者プレイヤーや住民の仲間にも情報が行き渡っただろうタイミングで、ゴン!! と大きな揺れが城を襲った。しかし不安定な形で積み上げられた資料の類が崩れたりはしていない。つまり、空間的な揺れだ。


「まぁ空間に関わる能力を伸ばした魔族の城なんですから、封鎖するのも当然空間的なものでないと意味がないでしょうね」

「先輩、これで暴れていいんすよね?」

「くれぐれもやり過ぎには注意して下さい。生存者の方が引き出せる情報は多いですし、私が封印すれば動けませんので」

「うふふもちろんよ。とはいえ、相手の力量次第で死力を尽くす必要があるのも確かよね」

「その通りですし、何より油断は大敵とここの魔族の皆様にはよくよく教えて頂きましたから、きっちり最後まで油断せずにいこうと思います」

「わー。皆さんやる気に満ち溢れてますねー」


 やる気っていうか殺る気だな。フライリーさんまで手加減がゼロ近くまで目減りしている。まぁここまで見つかったあれこれを考えると妥当でしかないけど。

 それに実際、見習いを含むとはいえ神に手を出して取り込んでいるんだ。大神の分霊の状態も分からないし、現時点で多少は力を取り込まれている可能性は高いだろう。

 召喚者特典大神の加護の便利さと強さはよくよく知っているからな。異世界のもので分霊から得られる欠片のようなものとはいえ、少なくともただの加護よりは上なんだろうし。だから、やり過ぎは良くないが、油断しないでいくっていうのは、妥当なんだよな。

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