第2679話 73枚目:探索予定

 先行している斥候組と合流する、と言っても、人数が人数だし、そもそも隠密行動が苦手だから他の町を落とす方に向かっていたメンバーが大半だ。もちろん斥候組と同じことは出来ない。

 それは当然の話なので、順当に先行していた斥候組の手引きや確保されているルートを通って進む事になる。私もレーンズの加護である魔視によってちょっと反則気味に種族特性の範囲を操作できるようになったので、うっかり引っかかったりする事なく進む事が出来た。

 どうやら斥候組の人達曰く、2つ目の壁を超えるところまでは楽勝というか、警備がザルなんだそうだ。……まぁ、最前線の先行偵察を任せられる人達だからな。腕前は世界的に見ても上から数えた方が早いだろうし。


「ただ3つ目の壁からはいきなり警備の数も罠の数も跳ね上がるからなー」

「あれ、貴族街とかそんなんだろ」

「そんな感じだな」

「で、城に入ると更に倍率ドンだよ」


 まぁでも難易度が高いだけなら何とかなるらしく、罠の一部を無効化したり、ダミー映像を流したりして通れる場所を作ったんだそうだ。ダミー映像って。

 フリアドの技術はどの辺がどうなってどこまで発展しているんだろう……とちょっと関係無い所に思考が飛んだが、それはともかく。そういう事前の工作があったお陰で、3つ目の壁もスムーズに突破できた。

 地図から見れた壁はこれで全部突破できたことになるが、実際はあと1つ、城を囲む壁があるんだそうだ。もちろん城の中も罠だらけだし、普通の通路も通行証に相当するものを持っていない場合は容赦なく攻撃される状態になっているようだが。


「で、その辺どうすんの?」

「いやーそれが召喚者の方々は発想がすごいですね。何でも、戦力の大半は城の外に配置されていて、その戦力を切り離してしまえば後はまぁ何とかなる、だそうで……」

「あん? どゆこと?」


 ヴィントさんが、3つ目の壁を越えたところで合流したニーアさんに聞いているが、私はそこまで聞いて察した。また司令部の思い切りが良すぎる案件か、と。

 つまりだな。


「その……お城の壁を通り抜けられるようにするのではなく、ある程度の戦力を引き込んだ状態で、逆に完全封鎖して、最終的に大規模破壊を伴って東側へ突破して脱出する、と……」

「あっはははは! 派手に行くなぁ!」


 何でも、その頃には連合軍本隊も十分近づいてるだろうし、司令官と相手の主力を切り離したところで騒動を起こして混乱させれば、連合軍への支援にもなるし、脱出も容易になるからと、そういう理由らしいんだが。

 どうせ最終ステージだし、諸悪の根源が相手だし、派手にやっても問題ないな? って部分がある気がするんだよなぁ。特に、最後の突破部分で顔を輝かせてる人が何人もいるし。


「一応確認しますが、それはあくまで、連合軍本隊が首都に到着してからかつ脱出の時の話ですよね?」

「もちろんです! 少なくとも連合軍の到着までは、出来れば城の封鎖もしない状態で探索して下さい、との事でした!」

「皆さん聞きましたかー? 連合軍が来るまではお行儀良く探索するんですよー? いいですねー?」

「お行儀良く探索てちぃ姫」

「いやまぁ言わんとするところは分からんでもないが」

「家探しは家探しでは?」

「どうせ最終全部壊すからってフライングしたら、最悪何も目的を達成できずに撤退する事になりますよ。戦犯になりますがいいんですね?」

「そらあかん」

「うっす」

「うーんちぃ姫の分かりやすいあかんポイント解説」


 ダメだぞ? 移動で半日ぐらいしかかかって無いし、あと1日半はかかるって言われてるんだから、その間は行儀よく、痕跡を出来るだけ残さないように行動しような。

 ……まぁお行儀よくとは言ったものの、元凶の本拠地に乗り込むんだから、もって1日あるなしつまりギリギリになるだろうが。何せ、絶対にダメな資料や情報が出てくるだろうからな。

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