第2678話 73枚目:最終探索地点

 距離自体はまぁ正直、大陸中を駆け回っていた時に比べれば何という事は無い。斥候組の人達が戻って来たのが夜中だったこともあり、その日の夜明けまでには首都が見える場所まで辿り着いていた。

 ここで私達独立遊撃部隊(召喚者プレイヤー組)は一旦休憩。夜の間の方が見つかりにくいから移動を優先したが、空間的な罠が山ほどある場所に突っ込むには集中力が必要だ。

 ついでに道中で拾った召喚者特典大神の加護での連絡を中継する役をしていた人を含めてパーティーを組み直したり、首都に残っていた人の中でも外縁部に待機していた人と連絡を取ったりしておく。んー、エルルとルシルとルディルは、たぶん今も首都の奥の方だな。そんな気はしたけど。


「あれ姫さん、ニーアマルカは?」

「もちろん中にいるでしょうね。空間由来の罠であっても、空気の流れがおかしいからという理由で見破れるそうですし」

「……ニーアマルカはどこに向かってるんだろうね?」


 ニーアさんがどこに向かっているのかはともかく、少なくとも今ここにいないメンバーはそれぞれ首都のどこかしらにいる筈だ。

 斥候組の人達によってざっくり首都の地図は出来ていて、それによればどうやらかなり大きい円形で、3重円になる形で壁があるらしい。ただしその円は、北を上とした場合の右側、つまり東側に寄っている。

 というか、一番外側の円であるところの防壁の、東端からサイズ違いの円を重ねたって言う方が正しいな。そういう形になっているからか、中央となる城も街の東端だ。


「国としての土地は東側にも広がっている筈ですが、随分と偏っていますね。城を中心として街を作る事も出来た筈ですが」

「それですが、どうやら昔からこの大陸の東側の海は流れが非常に早く、海底火山と海溝が南北方向の縦縞模様に並んでいるという事で、渡鯨族どころか竜族も近寄る事すらできない世界屈指の難所なのだそうです」

「あの大穴になる前から、海を介しての行き来は無かったんですね」


 竜族でも近寄れないって相当だな。だがまぁ、元から最初の大陸とのやりとりは無かったって事が証明されたけど。それにもしここが行き来できるんなら、最初の大陸の西側にも渡鯨族の港町がある筈だしな。

 まぁつまりこの最後の大陸において東側の海というのは、近海での漁ぐらいは出来ても航行は出来ない場所だった。それはつまり断崖絶壁のような地形であるという事であり、そちらからは何も来ない事が確定している、壁として使える地形だったって事だ。

 そして壁として使えるのなら、そちらを背にするのは当然の発想だろう。だからこそ、東側に寄った形の発展になったと。


「ただし、当然ながら竜族は空を飛んで東側から来ることが可能なので、当時最先端と思われる対空攻撃を主とした防衛機構は整備されているようですが」

「ほぼ竜族専用の対空攻撃もしっかり研究していたんですね……」

「もちろん通常の侵入対策も用意してあるようでしたし、通常通るルートではないからか、こちらからの侵入は非常に難易度が高いと言わざるを得ません」

「まぁ、普段通る人がいないのであれば、何かがいる時点で怪しめるでしょうから、仕掛けも簡単かつ強力なものに出来るでしょうし」


 何ならダメージ床を設置したりすればいいだけだからな。何故ならそこを通る用事は点検以外には無いのだから。そこにいる、イコール侵入者と判断しても構わない訳だ。

 出入りの事を考えなくていいのであれば壁としての強度も上げられるだろうし、こちらからの侵入は現実的ではない。もちろん全力でバフをのっけたサーニャの全力攻撃とかならぶち抜けるだろうが、周辺被害もすごい事になるから、最終手段だな。

 出来るだけ穏便に行きたいのであれば、やはり侵入経路は西からという事になる。最終目標は、その堅牢な東側の壁にくっつくようにして存在している城だ。最終防衛ラインであり、この国の最重要建造物である為、大変堅牢であると共に迫力のある、黒っぽい城である。


「……魔王城ですねぇ……」

「みのみのさんがデザインだけは褒めていましたよ」


 うん。召喚者プレイヤーなら大体同じことを思うよな。

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