第2677話 73枚目:方針決定

 ちなみにその情報が連合軍に共有された結果、まともな国の人達ほどブチ切れたらしい。なおこの時点では人間種族至上主義の神及び神官もだいぶまともだったので、絶句からの敵認定が早かったようだ。

 なお現場にいた人の証言によれば、一番怖かったのは、召喚者プレイヤーというかエルルの初手の説得で残ってくれていた御使族の人達との事。それはそう。……そうか、それで急に空が曇って来たんだな。落ち着いてほしい。無理だろうけど。

 まぁそこから全体連絡スレッドに速報という形で、御使族の人が神の奇跡で筆頭様に連絡を入れて、秒で神敵認定が返って来たって情報が書き込まれた。うーわ。いやまぁそりゃそうなるだろうけども。


「錦の御旗が手に入ってしまいましたね……」

「え? もう相手終わったんじゃない?」

「異界の大神は捕まったままですし、多少なりと神の力は取り込んでいるでしょうから、神の敵になっただけでは崩れないと思いますよ」

「うわぁ」


 最悪、異世界に逃げられる……ところまで考える必要があるかどうかは分からないが、ともかく、一切の加護と祝福を断たれたとしても何とかする事は出来るだろう。そうでなければ、もうすでに白旗が掲げられている筈だ。

 残り時間は加速状態でほぼ7日、1週間だ。通常空間なら9時間半弱。ここから通常空間に戻るかどうかは分からないが、要救助対象がいる以上は急いだ方がいいだろう。

 というか既に異世界の過去に干渉してるって事だから、いつ「モンスターの『王』」化した修神おさめがみか神がこっちに出てくるか分からないんだよな。一応全部撃破してきたし、劣化した復活レイドボスという形で散々相手にはしてきたが、それはそれとして出てくると厄介極まりない。


「おっと、連合軍の動きも早いですね」

「それはそうだよ」

「行動開始か殿下ぁー?」

「はい。連合軍が正面から首都へ通常速度で向かい、到着予定が2日後。私達は独立遊撃部隊として別ルートで回り込み、先行している斥候組に合流。より詳細な情報を受け取り、そのまま現地で行動します」

「何が最優先だ? 王の首か?」

「それは可能ならの目標で、優先度が低いかつ連合軍に花を持たせる為に必要なので後回しです。最優先目標は異世界への干渉の中断、及び異世界へのゲートの破壊です。次点で異世界の大神の分霊の救助。その次がゲートに関する資料の回収となります」


 正直、この国の王を名乗ってゲートから異世界への干渉を主導している奴を闇討ちするのが一番早いと思うんだが、そこはこの時代にちゃんといる連合軍に任せないといけないらしい。

 まぁ異世界への干渉さえ防いでしまえば「モンスターの『王』」が出現する事は無い。つまり世界規模スタンピートも発生せず、非常に妥当な結果、すなわち連合軍の勝利となるだろう。だから問題解決としては成功だ。

 ゲートに関する資料が必要なのは、大神の分霊を元の世界に戻す必要があるからだな。もちろん通常空間に戻ればゲートが開きっぱなしになってる可能性は高いんだが、向こうの世界に与える影響を最小限にしつつゲートを閉じる為には、ゲートに関する情報も必要だし。


「先行して首都を調べてくれた人達が戻って来たのは、空間由来の罠が山ほど仕掛けられていてそれが突破できなかったからだと聞きました。もちろん罠を回避できた人もいますし、こちら側の魔族の方が解除できる罠もあるそうですが、十分に気を付けて行動して下さい」

「姫さん、見つかった場合は?」

「出来れば捕縛ですが、どうしようもない場合はそのまま倒してしまって構いません」


 モンスター扱いになったからな、あの国。御使族によって神の敵と認定されるっていうのはそういう事だ。もちろん、死ぬだけでは贖えないという意味で出来るだけ生かして捕まえる事が推奨されてはいるが、容赦はない。

 ……。ただ、相手にも異世界のとはいえ大神がいるからな。その力を取り込む事を目標としているなら、それこそ、疑似的な大神の加護死に戻りぐらいは再現できている可能性が無いとは言えない気がするんだが。


「もちろん、出来るだけ見つからないように行動する前提です。暴れるのは連合軍が到着して、先端が開かれてから挟撃する形になってからですよ。いいですね?」


 一応もう一度、うちの子と竜族部隊の人達には言い含めておくが、さてどうなるかな。そういう厄介な能力が追加されてない、っていうのが一番いいんだが。

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