第2673話 73枚目:攻略と探索

 私はリアル1時間後に一度ログアウトする事にしたので、内部時間で3日行動できる。そして私と一緒に行動してくれているのはうちの子と竜族部隊の人達であり、その総合戦力は、まぁ、非常に高い、と言ってもなおオブラートに包んだ言い方になる。

 結果、町を落とす為の戦闘より、移動時間の方が長いって事になる。当然ながら移動速度も速いもんだから……昼にこっちに合流して夕方から行動開始したのに、加速状態の次の日の夕方には落とした町の数が4つを数えているんだよな。

 当然ながらそんな戦果を挙げれば連合軍の方がざわざわしそうなものだが、そこは司令部が上手い事「召喚者プレイヤー陣営の戦果」として煙に巻いてくれたらしい。相変わらず有能で助かる。


「んで? 殿下的にはこっからどうすんの?」

「明後日のお昼から1日半ほど休憩を挟むというか、そこで大神との契約の都合上私が休みます。なのでそれまでは周辺行動に留めつつ情報収集をして、そこからは首都で行動し、可能なら“呑”むと呼ばれる存在の召喚を阻止します」

「あぁ、そんでたいちょーを先行させたって訳な。りょぉかい」


 ヴィントさんに今後の行動予定を聞かれたので、ざっくりと返事をしておく。大体そういう感じだな。実際は“呑”むって存在の正体とか、ここの魔族のマイナーチェンジ方向とか、それこそ現在の首都の様子とかで何もかもの前提がひっくり返る可能性はあるけど。

 とはいえ、そんなとびっきりの想定外を予想するのは無理だ。なのでとりあえずの方針はそんな感じだな。問題が起きない訳がないのだが、一旦はそういう方向で行動する事になる。

 当然、連合軍の動きや他の町での戦闘も影響してくるんだが、それはもう臨機応変にとしか言えない。絶対に想定外が待っているのは分かっているんだから、警戒だけはしておく、ぐらいしか出来ないんだよな。


「絶対、確実に、何かしらの想定外は起こるのが分かってますし。というか、想定外が起こったから世界が終わりかけた訳ですし……」


 本当に、どうやって堕ちた異界の大神を召喚出来たのか。それが可能な種族特性とは一体何なのか。そこが分からないと対策も何も無い。そしてそれは現在、元凶の首都に潜入して探索してくれている斥候組の報告待ちだ。

 その斥候組を邪魔する、恐らくは国の各地にある集落を鍵とする特殊な防御を剥がす為に、支援行動としてこうやって国のあちこちにある町を攻め落としている訳だ。どうしてそうなるのかの理屈は分からないが、恐らく力場による土地の支配権がトリガーなのでは、というのが司令部の人の推測だな。

 まだ連合軍の本隊がいる場所と首都の内部では直接連絡が取れるところまで行ってないものの、道中に点々と召喚者プレイヤーを配置する事で、かなりリアルタイムに近い頻度でやり取りは出来る。それによれば、大体それで間違っていないらしい。


「ま、それでも普通に守りが固くて苦戦しているようですが」


 魔族、もとい、魔人族っていうのは空間と魔力の扱いに長ける。その得意分野として空間的な罠も仕掛けてあるそうで、かなり難易度が高いんだそうだ。もちろん先行して突入しているのを知られる訳にはいかないので、大々的に暴れるのも無しだ。

 まぁ知られる訳にはいかないと言っても、ここまで派手に戦争してるんだ。その最中なんだから、首都に何かが入り込んでくるのは向こうとしても当然あると想定されている筈だ。

 となれば、まぁ当然ながらこちらにも同じように仕掛けられている訳だが、その辺は司令部がちゃんとガードしているし、そもそも召喚者特典大神の加護によるやり取りは住民には感知できないからな。それもあって召喚者プレイヤー陣営は連合軍と協力しつつも別行動してるんだし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る