第2666話 73枚目:対処完了
そこから夜も何だかんだと色々あったがとりあえず一旦割愛し、翌朝。
〈っはー! やっぱここを新しくすっと気分いいな!〉
核となる歯車自体は昨日の作業で出来上がっている。一昨日、記憶をなくした職人の人達にキレながらもナージュがしっかり打ち合わせを進めていたからだな。
で、朝一番、工場が始業して最初の仕事は、昨日作った核となる歯車の交換だった。交換中は流石に姿を消していたナージュだが、再稼働が始まったらすぐに姿を現したので、問題は無かったようだ。
何が変わったのか、と言われると、私は着ているツナギみたいな作業着の汚れが綺麗になったぐらいしか分からないし、何ならすっきりしたのは工場内部から邪神の力が一掃されたからっていうのもあるんじゃないかと思ったが、まぁ言うまい。
〈よし! そんじゃ、使いの!〉
「何度でも確認しますが本気ですか?」
〈おうよ。あぁそうだ、お前らも見せてもらえ! 俺ら並みの精度もそうだが発想が面白れぇ!〉
「…………念押ししますけど、解体は無しですからね。声も出来るだけ出さないようにお願いしますよ」
……逃げられなかったか。
さてテンションが高いナージュと、そのナージュのオススメでギラっと目が光った気がする職人の人達の前に出すのは、50口径の拳銃だ。魔法式の。そう。私用に作ってもらった奴。
しぶしぶベルトからホルダーごと外して、作業台の1つに乗せる。すぐにわらっと職人さん達に囲まれて、声を出来るだけ出さないようにと言ったからか、ぼそぼそごそごそ、密談でもしているような感じで見学会が始まった。
そうなんだよな。昨日の夕方、やっぱり名前の無い邪神の眷属だったあの透明な布みたいなやつ。あれを折りたたみつつの雑談の流れでナージュに見せたら、びっくりするぐらいテンションが上がって。
私の奴は威力と精度重視であり、1発ごとに「内部で弾を作って」発射する形式だ。弾の種類を決定するトリガーは詠唱であり、決定してからは自動作成かつ、撃鉄を起こすことで装填される。
だから排莢や弾倉交換の機構は無く、その分だけ頑丈に作られている訳だが、その内部構造がな。独自詠唱に応じて作る弾を変更する部分とか、不要な筈の撃鉄を装填のキーにするとか、その辺が精度の高さが売りの金属製品を作る工場の神の琴線に触れたらしくって。
「使いさん、これバラしちゃダメか!?」
「もっと細かいところまで見たいんだが!?」
「ちゃんと元に戻すから!」
「そのまま改造されそうなのでダメでーす」
「うっ」
「ぐっ」
ははは。ナージュと全く同じことを言いよるわ。改造する気じゃないでしょうね? って言ったら目を逸らしたナージュと反応までほぼ一緒だわ。仲いいな。それとも神と神官だから最初から似てるのか、あるいは似てきたのか。
〈はっはっは。すげーだろ。だから俺はこの使いに分霊渡して連れて帰ってもらう〉
「あっ工場長ずりぃ!」
「俺も連れてってほしい!」
「待てこういうのは年長順だと決まっててだな」
「いや若手こそ新しい技術を学ぶべき!」
「人は連れて帰れないので無理でーす」
あ、撃沈した。そしてなら今のうちに調べるだけ調べようと更に集中し始めた。うーん……本来の歴史のこと考えると、この工場、無いんだよなぁ……。
まぁともかく、それがさっきの、私が何度も確認した案件だ。核となる歯車を交換したら、前の歯車は素材にするか廃棄する事になる。神の核だったんだから大体は素材にするそうなのだが、今回はそれにナージュが分霊を宿して私に押し付kゲフン持ち帰らせる事にするらしい。
なお、持って帰ったら神殿を建てるのでそこに安置すればいいですかと聞いたら、何言ってんだオメーちゃんとそれが作られた作業場に持って帰れ、といわれた。マジかよ。
「……こっちで建てる神殿にも行って下さいね……」
〈そりゃあそっちの神殿の居心地次第だな!〉
ナージュ本来の気質とうちの作業場というか鍛冶場とこっちでの神殿での扱いを考えたら、絶対どう考えてもうちの鍛冶場に入り浸るのが分かってるからこうして頼んでるんだろうが。頭痛の種が増えたんだがどうしてくれる。
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