第2665話 73枚目:原因対処

 しばらく色々試してみた結果、どうやらあの通常視界だと透明な布みたいな動きをする推定名前の無い邪神の眷属は、進路上に何かがあるとそれを包み込み、搾り上げて吸収して大きくなる。なおかつその動きを優先するという事が分かった。

 そしてそれに加え、捕縛系の魔法をかけたところに更に捕縛系の魔法を重ねると、本物の布のように折りたたまれるらしい。ただそうやって折りたたまれたら、町の方から追加の布のようなものが飛んでくるんだよな。

 ただまぁ大きさとしては最初に飛んできたものが一番大きいので、あれが本体でいい筈だ。それに魔法を重ねると欠片もしくは分体も集まってくるんだから、このまま続ければいいだろう。という事で。


〈俺の上で何やってんのかと思ったら、何だありゃ〉

「推定原因ですね。町の方から飛んで来ようとしたので、念の為迎撃をしてます」

〈さっきここまで来た奴らに聞いたが、本気で俺を狙ってたのか。随分なデカさに育ってんなぁ〉


 聞いたというか聞き出したというか。いや詳細は聞くまい。ナージュはその情報を持っているという事だけ把握しとこう。

 通常視界だと透明な、魔視だと苔と錆を混ぜたような色の布っぽいものをひたすら折りたたみ、追加の布を呼び寄せては更に折りたたみと繰り返していると、ナージュが屋根の上に登って来た。

 そして工場寄りの町の上空で折りたたまれている布のようなものを見て、呆れたような声を出す。うんまぁ、大きさは確かにな。元がどれくらいの大きさだったのかは私にはわからないけど。


〈で、どーすんだあれ〉

「追加が来なくなるまで集めてまとめて、一気に封印してしまおうかなと」

〈あの大きさをか?〉

「封印を重ね掛けたら長時間持つようになる上に、圧縮できますからね。保存期間と強度と持ち運び的にも、しっかり封印するつもりです」

〈……封印の重ね掛けって気軽に言うが、普通は神官数人がかりでやるもんなんだぞ? しかも重ね掛けとか、この分だと封印した後に動かせるようにも聞こえたが?〉

「最初に正体不明だった修神おさめがみも封印した状態で持ち運んでたじゃないですか」

〈そういやそうだったなー。ったく、俺は結構長生きしてんのに、ぽんぽんと見た事も聞いた事もねぇ真似をしやがるとかよぉ〉

「世界の広さを知れて良かったじゃないですか」


 やってる事自体は単純作業なので、こういう雑談をする余裕もある。捕縛系の魔法は大体が設置型だ。つまり、発動してしまえば維持する必要はない。だからタイミングと場所を見て連打するだけでいい。楽なものだ。

 しかし、こっちだと封印って言うのは結構大変な部類になるんだな。まぁレーンズの反応から見てもそんな気はしたけど。というかそもそも封印魔法を力づくで重ねて1つにまとめるのは私ぐらいだろうけど。

 いやでも確か、なるほどそういう事が出来るのかー、と動画かなんかを見て素直に覚えちゃった新米召喚者プレイヤーが、そういう認識で封印魔法を扱った結果、何か思った以上にするっと出来た、とかいう話もあった気がする。やはりこういうのは認識というか、術者の意識の問題では?


〈……ん?〉

「どうしました?」

〈いや……使いの。それ、その腰の後ろにあるのは何だ?〉

「腰の後ろ……あぁ、これですか?」


 みたいなことを思ったりしていると、ナージュが何かに興味を引かれたらしい。腰の後ろ? というと、オーバースカートっぽくなっている「アクセサリストッカー」、ではなく、私の装備の中では一番新しいやつだな。

 ふふん。そうさ。私も魔法式の銃を作ってもらったんだよ。魔法撃つ方が早いだろっていうのは一旦さておく。普通に装備効果だけでも有用だし、何より一点に火力を集中させるだとこっちの方がいいんだ。

 ……私のステータスに耐える必要と、私の戦い方的に、50口径の拳銃っていう普通は射手の肩が吹っ飛ぶあれになってるけど。

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