第2659話 73枚目:判明追加

〈……何かやってんのは分かってたが、確か、塩の浄化をしてたんじゃなかったか……?〉

「正直に言っていいですか? 私も7割方想定外なんですよ」

〈3割は想定してたのかよ〉

「唆されてる時点でそっちの方向の影響も受けてるだろうな、とは……」

〈あー〉


 ふふ。想定外はいつだって突然現れるもの。そうだな。


「で、ナージュさんはどう思います?」

〈どうもこうも……生まれられなかった子供っていうのは神に近い。それが寄り集まったんなら本質が強調されるのもある。だから不自然じゃないしあり得ない事じゃねぇ、ぐらいだな〉

「ですよね」


 まさかのさぁ。黒子衣装そのものが推定唆した奴の影響だったから剥がれて別の服になるまではまぁいいとして、その中身が、大神の分霊似の子供になるとは思わないじゃん……?

 まぁ似ているといっても、こちらは割とパッと見て分かる程度に少年寄りだし、白くなった顔布はそのままだがそれがめくれて見えている寝顔は大変幸せそうに緩んでいる。服装も白寄りの灰色ではあるが半そでシャツに短パンだし。

 いやー、お風呂できゃっきゃしている修神おさめがみにお風呂で出来る手遊びを教えたりしつつ浄化の力がついた水をお湯にして注ぎ足してたら、どんどん黒子衣装がとけていくのは流石にヤバいんじゃないかと思ったが、それ以上にヤバい事実が出てきたな。


「どうしましょう」

〈どうするもこうするも、こうなりゃもう大神の神殿からの使いが見逃がさねぇだろ。3日後にはここに来るんだ。何なら俺を放り出してでも保護に走るだろうさ〉

「まぁ、でしょうね」


 だろうなぁ。としか言えない訳だし、たぶんそれがベストではあるんだろう。そしてこうなったら当然ながらこの修神おさめがみも防衛対象だ。何故か唐草模様はそのままの布包み(お香の瓶入り)を大事そうに抱えて寝落ちているが、確実に狙われるだろうし。


「とりあえず塩の浄化は終わりました。副産物として出来た浄化の力がある水は、工場を囲む壁の周囲に撒いて来ましたので、多少は結界に近い力が働くかと」

〈あぁ、なんかすっきりしたと思ったらそういう事してたのか。塩は?〉

「多少は修神おさめがみの浄化で消えましたけど、ここに来る前に厨房に行って後片付けをしていた人に渡しました。元はここにあった塩ですし、私は持って帰れませんからね」


 本来はこの報告をする為にナージュを訪ねたのだが、蒸発するような音が聞こえなくなったと思ったらお風呂で寝落ちしていた修神おさめがみがこの姿になっていたからさ。まぁこっちが先だよな、と思って。

 なお塩の結晶は、修神おさめがみをお風呂から上げて寝かせている間に厨房に渡して来た。そこから水というかぬるま湯になった浄化の力がある水を撒いて、簡易お風呂を片付けて、黒子姿じゃなくなった修神おさめがみを抱きかかえて戻ってきた訳だ。

 まぁこういう話をしている間も何か歯車が動く音がそこら中からしているので、ナージュもこの修神おさめがみを守る方向で動いているのだろう。物理的に。もちろん守らないという選択肢は無いが。


「そう言えば、そろそろ夕方に何があるのか教えてもらってもいいですか? 思いがけず守る相手が増えたので、情報は多い方がいいんですけど」


 もちろんナージュを守るのは必須でありメイン目標だ。そこは動かない。だが恐らく、この修神おさめがみを守れなくてもアウトだろう。これだけ見た目からしてこの世界の大神に似てるんだ。絶対何か影響が出るか、出せるようになる。

 ……っていうか、レーンズの時以外は全部何かしら大神にまつわる物が出てきてるな。水晶玉とか鈴とか指輪とか、主に神器が。まぁレーンズの時も、私が聞きそびれただけで何かあったのかもしれないけど。

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