第2658話 73枚目:待機中
さて調理場に居ても邪魔になるし、工場の方でもまだ作業が続いている。つまり工場の中に居てもお邪魔になるだけなので、私は一旦工場の外に出てきていた。
魔視でみたら酷い色の塩の浄化を進める為に、「潮風結晶」を浮かべた状態で魔法で水をかき混ぜつつ酷い色の塩を投入している。こうすると塩が溶けた端から「潮風結晶」で結晶化するんだ。
そしてその様子を見るのが楽しいらしく、黒子姿の
「……。触ってみます?」
「いいか!?」
「どうぞ」
なお一応ナージュに聞いたのだが、
なのでそこそこサイズの木箱をインベントリから出して、それを机代わりに、50㎝四方ほどの大きさになった塩の結晶を置いた。これでも「潮風結晶」が完全に沈んでしまう事は無かったんだが、そろそろ横から塩を入れるのがキツくなってきたからな。
早速、と言う感じで黒子姿の
じゅっ
「わ」
……今なんかすごい嫌な感じの音が聞こえた気がするなぁ……!
「わあ。わあ。すご。じゅーじゅー」
「……痛かったり熱かったりはしませんか?」
「たのしい!」
よく熱した鉄板に、水滴を落としたような音。大体の場合、多くは痛みを伴う音なのだが、動揺を抑えて聞いたところ、
いやまぁ鳴らしてるっていうか……黒子姿、そう形容した通り、指先まで黒い布に包まれている状態の、その指先。塩の結晶に触れたところから、色が薄くなっていってるから、たぶん、浄化されてるんだが。
あと浄化に使っているからか、塩の結晶も少しずつ小さくなっている気がする。いやまぁこの塩は調理場にあってダメになっていたものを浄化した結果結晶になったものだから、この世界の為に消費されるんならそれは別にいいのかもしれないが。
「…………。そういえば、お風呂って入ったことあります?」
「おふろ?」
「はい。温かいお湯に全身つかるものなんですけど、とっても気持ちいいんですよ」
「きもちい? はいる!」
「はい、じゃあ用意しますからちょっとだけ待ってくださいね」
もちろん通常の
……のだが、まぁ、さっきまでのナージュの事を考えればまぁ答えは分かるよなって話だ。何しろ最初から、ここの職人の人の記憶を持って行ったのは、そう唆されたからなんだから。
と言う訳でささっと土属性の魔法を使って小さな石製の湯舟を用意し、そこに一旦投入した塩を完全に分離出来た樽の中の水を入れる。樽には新しく水と塩を入れて「潮風結晶」を浮かべ、湯船の中の水を魔法で温めてと。あ、ついでにお湯が飛び散らないように風の防御張っとくか。
「はい、ゆっくり入って下さいね」
「はーい!」
お香と引き換えに話してくれた時も思ったけど、素直~。
いそいそと湯船に入った黒子姿の
しばらく塩を投入しては分離しつつ浄化していたからか、塩に比べればお湯の減り方はゆっくりだ。それでも減っていってはいるから、樽の方で浄化作業は続けながら注ぎ足していこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます