第2657話 73枚目:対処結果

 職人の人達全員に浄化の力がある塩水を飲んでもらった結果、驚いたことに、全員私の事が見えるようになったらしい。

 単に見えないものが見えるようになった、という訳では無いのは、黒子姿の修神おさめがみは見える人と見えない人に分かれたので確定。霊体系の修神おさめがみが見えたのは、長年この工場で働いている人、つまり、通常の神殿と神であれば高位神官と呼ばれる人だったしな。

 なおそろそろ昼食の準備をしなきゃいけない、って事で食堂の厨房に入っていた人(交代制でこちらも職人の人だ)にちょっと待ってもらい、食材や調味料を確認した結果、私からすれば魔視の強度をかなり下げても元の色が分からない程、苔と錆を混ぜたような色に染まっているものがあった。


「まぁ、まさか塩がダメだとは思いませんでしたけど」

〈体を動かすから塩辛い味付けになりがちだしな。よく食うだろうし、まず毎食口に入る。内側から染めるにはうってつけってか〉

「はーい空気が怖いんで落ち着いて下さいねー」


 とりあえず今回は私が持ち込んだ塩を使ってもらい、その場にあって私視点酷い色になっている塩は回収。まぁ他にも若干怪しい食材はあったし、ヤな予感がして保存食を見せて貰ったら、こっそり作られてた自家製ジャーキーが酷い色になってたのを見つけて回収した。

 どうやら酒飲みの人らしく、厨房担当の時にこっそり作り溜めておいたんだそうだ。もちろん肉は自分のものだが、塩はここのものを作っていたそう。……この工場、内陸にあるから塩が高いんだってさ。

 その結果を受けて職人の人達にナージュが圧をかけたら、しょんぼりした様子で何人かが出ていき、しばらくして私視点酷い色の保存食を持ってきたから、他にもこっそり作っている人はいたらしい。自分の部屋というか寮に持って帰って晩酌のアテにしてたのか。


〈……。なるほど、少しずつだから気付かなかっただけで、割と影響は出てたみてぇだな〉

「落ち着きました?」

〈思ったより余裕がなくなんのが早ぇ。あと、俺は本来子供好きだ。なんせ未来を担うのは子供だからな。大きさも動きも何もかんも可愛いしよ。何より、命を祝福すんのは神の性だ〉

「つまり、あの修神おさめがみを引き取る事を渋っていたのはおかしいんですね」

〈おかしいな。自分でも気付いてなかったが、まともならお前から多少強引にでも引き取ろうとしてただろうさ〉


 まぁ私は最初からナージュに押し付けゲフン引き取ってもらうつもりをしていたから、本来ならあの説得()の時間が無かった筈って事だな。だいぶ影響出てるじゃないか。

 工場という本体の中に結構な量の他の神の力(推定名前の無い邪神)が持ち込まれていたことが判明し、自身に仕える神官である職人の人達の汚染も進んだことで発生していた異常。それを認識できたという事は、ひとまず一掃できたって事だろうか。

 汚染された塩は、とりあえずでっかい樽を貰ってそこに水を入れて、可能な限り溶かしつつ「潮風結晶」で浄化している。ものすごい大きさの塩の結晶が出ているが、魔視でみてもちゃんと透明な結晶になっているので良し。


「ただ問題は、これを仕掛けた相手ですね」

〈だな。まぁここまで俺を狙ってきたんだ。最終どうするのかっつーのはともかく、相手は絞れる〉

「正体もそうなんですが、ここまで汚染を進められる以上、潜んでいる場所も早急に特定しないとまずそうかなと」

〈あぁ、それは大丈夫だ。大体当たりはついてるし……そういや使いの、お前いつまでいるんだ〉

「明日一杯まではまぁ。明後日は無理です」

〈ならいけるな。夕方には動けるように戻って来てくれ〉


 ふむ? 今日の夕方に何かあるんだな。……塩含む食材の搬入か、それとも缶みたいに開いた歯車の納品か。その両方が実は同じ場所だったら、話が早いんだが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る